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霊感少女   第二章  二部

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霊を呼ぶ男





「頼みが あるの」


部屋に 入って来るなり 相楽が 告げた

告げられた相手は 相楽の彼氏 [田村 雅人]
どちらかと言えば 頼りない男だ

「いいよ」
まったく 暢気な返事が 返ってきた
「いいよ…て 何よ」
相楽は ムッとした顔で 雅人を 睨んだ

Tシャツにパンツ姿で テレビゲームをしながら
「嫌だって言っても やらせるんだろ?」
と 画面を見続けていた


大概 相楽の頼み事は すべて 通る
…通ると言うより 断って喧嘩になり 毎回 雅人が折れる形で 押し通されるのだ

無意味な喧嘩は しないに限る


「…いいの?」
珍しく しおらしい相楽の声に 雅人は ゲームのコントローラーを 下ろした


「…どした?」
逆に 不安になる


「明日 学校に来て欲しいの」
「学校?あぁ いいよ」
「午前中に」
「午前中ね…ご…午前中?」
雅人は 焦って 漸く 相楽の顔を見た

青白い顔が 更に 白さを増している

「…俺…学校だぞ」
「わかってる」
「休んで 来いってか?」
「うん」

呆気に取られて 言葉が出ない


「ちゃんと話を聞いて」
「…お おう」
「ゲーム消して」
「いや…待て セーブを」
「消して!」


雅人は渋々 コントローラーのスタートボタンを押し 一時停止をかけて テレビ画面を消した


深刻な話は あまり好きではない
とくに 相楽の話す深刻な話は 難し過ぎて 意味がわからないからだ


雅人の顔に そんな事が 書いてある様な態度に 相楽は 溜息をついた


…間違ったかしら?


仕方ない
一か八かの賭けに
雅人が 必要なのだから


「由美が居なくなった事は 話したよね」
「見つかったか?」
「…まだよ」
「そ…そうか」

更に 深い溜息をついた

「黙って聞いて」
「……はい」
「由美を助けたいの」
「…?」
「助けられるか わからないけど」
「…おう」
「やってみる価値も ないかもしれない」
「ん!」
「でも 時間が ないのよ」
「んん」
「だから 雅人に学校に来て欲しいの」
「そうか」
「わかった?」
「わからん」

やはり サッパリわからない話しになった

苛々し始めた相楽は ゲームのリセットボタンを押した

「だぁ!何すんだよ」
雅人は 慌てて 無我夢中でコントローラーのボタンを押しまくった

「真剣に聞いてくれないからでしょ!」
怒りに満ちた声で 相楽が怒鳴った

情けない声で
「聞いてるって…」
と ガックリと肩を落とす雅人に
「とにかく 明日 朝7時。学校に一緒に行って貰うからね」
「…早ぇな」
「わかったの?」
「…わかったよ」

結局 相楽の頼み事は いつも こんな感じになる

「それとね」
「まだ 何か あるのか!」
「パンツ一丁で いないでよ!」
「…い…いいじゃねぇか 俺の部屋なんだから」
「わかったの?」
「………」

雅人は まさに 蛇に睨まれた蛙に なっていた


この情けない男には
不思議な力が ある


  【霊を呼ぶ力】


霊を呼ぶと言うより
引き寄せる力が 強い


ただ 雅人に まったく
霊感は ない


霊感のある相楽は 不思議な体験を 何度となく 雅人のおかげで 巡り会わされてきた


二人で 道を歩いている時 生命体を持たない 霊体と擦れ違う事がある

霊体は 雅人と擦れ違うと 波動が合うのだろう

仕切りに霊体が 雅人に話しかける姿を 何度か 見た

しかし 雅人は 全く 気付かず 暢気に 頭を掻いたり 欠伸をしたり

雅人に憑いて来た霊体が 次第に あきらめて帰って行く

なんとも 不思議な体験だ


時には しつこく 雅人に張り憑く霊に 霊感のある相楽の方が 被害が及び

そのたび 相楽と雅人は 理由なき喧嘩を させられたものだ




そんな 雅人を
学校に呼んだのは






……呪札の封印を
解く為





正直 どこまで 雅人の
【霊を呼ぶ力】が 通用するか 解らない





……呪札の効力と
雅人の力



一か八かの賭けなのだから