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霊感少女

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出会い





【偶然ではなく必然】


そんな言葉を
最近 よく耳にする


幼い頃 祖父に
教えられた事を
思い出す



子供の頃
夏休みの課題で
朝顔の観察が あった

いつも置いてある場所に
ジョウロが 見当たらず
辺りを 探し
水やりに都合のいい
壊れた玩具のスコップを
見つけ
スコップで掬った水を
朝顔に 汲んでいると
祖父に声を かけられた


「不思議なジョウロですね」


望は スコップを見せ

「ジョウロが なくて 偶然見つけたスコップよ」
と 祖父に渡した

祖父は 手の平で
大切そうに
スコップを包み

「偶然なのかな?」

縁側に座り 庭を見ていた

「望は 偶然の〈偶〉と言う漢字を 知ってるかい」
「偶数の〈偶〉ね」
「ニンベンに愚かと書くだろ ニンベンは人だ
〈偶〉とは 心がない愚かな人が 考える事を意味する わかるかな?」
「なんとなく」

祖父の話は 難しい
だが 嫌いでは なかった


「望は ジョウロがなくて
困っていたんだろ?」
「うん」
「困っている望を 助けたくてスコップが 現れた」
「スコップが?」
「そうだよ だから望は スコップのお陰で 朝顔に水を あげられたんだね」
「うん」
「助けてくれたスコップに 偶然 見つけたと考えるのは どうかな」
「感謝がないのね」
「いい子だ スコップに感謝をしなさい」


そんな話を 思い出す


【偶然な出会いもまた
必然なのかもしれない】



その日も
高校の友人と
たまたま買い物を
していた時

偶然 友人の中学時代の友達と ばったり出会い
一緒に 食事をした


友人の友達は [峰岸]と名乗り
活動的な少女に見えた

私とは 正反対だ

初対面なのにも
関わらず

「相楽は 細いくせに
早食いだな」
「そう?」
「あれか?痩せの大食い」
勘が 鋭い

そんな 峰岸と
帰宅方面が 同じだったので 一緒に 帰る事になった


途中で 何かを 察知した峰岸が 自転車のスピードをあげた


Yの字の交差を突っ切り 三角地帯になった
本屋の駐輪場目掛け
ペダルを 踏み込み


自転車に跨がった
男の真横から
ノーブレーキで突っ込んだ

「ガシャン!!」

激しい金属音が
響き渡る


薙ぎ倒された男の
後頭部 すれすれを
車のタイヤが かすめ


「殺す気か!!」


男の叫び声が こだました


男の友達らしき人が
下敷きになった自転車を
避けると 顎を強打したらしく パックリと開いた傷口から 血が 滴り落ちている


相楽は 目を 疑った


その男の体から
霊体が 纏うはずの
発光体を 放っているからだ


人体から出る
オーラの色では なく


見た事もない
【藍色】をした発光体

あまりにも
綺麗な 深い蒼に
引き付けられ


男の前に かがみ込み
無意識に言葉を漏らした


「好きかも」



これが
【田村 雅人】との
出会いだ


偶然が 招いた
必然な出会いだった


作品名:霊感少女 作家名:田村屋本舗