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同調率99%の少女(13) - 鎮守府Aの物語

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 ドアを開ける一歩手前で那珂は立ち止まった。心にかかった若干の靄が彼女の足をわずかに止めさせた。軽く深呼吸をする。提督には背を向けているので表情は誰にも見られずに済むため、那珂は目をそっと閉じて上唇と下唇をゆっくりと引き離して言葉をひねり出す。

「……ねぇ、提督。」
「ん?なんだい?」

 PCに向けていた顔を上げて提督は軽く聞き返す。その声を聞いて那珂はわずかに葛藤したのち、言葉を飲み込んだ。そしていつもの調子に戻る。
「ううん。なんでもない。なんかおもしろい冗談思いついた気がしたけど〜いいや!」
「はぁ……なんだそりゃ。」
 今の那珂の向きでは当然提督の顔は見えない。提督も那珂の様子に気づくはずもなく、PCの画面に視線を戻して作業を再開した。

 那珂は提督が発するカチャカチャという打鍵音を背後にしたままドアを開け、普段のにこやかな笑顔をして振り向き、別れの挨拶をして執務室を後にした。

((提督に聞くことじゃない……よね。かと言って川内ちゃんに面と向かって聞くことでもないし……。いくら趣味で気が合うからって、二人共まだ出会って間もないんだし、変な勘ぐりや想像を口にするのはやめよっと。川内ちゃんはせっかく学校外で居場所を見つけつつあるんだから、あたしが和を乱したらいけない。余計なことを考えるなんて、あたしもまだまだだなぁ……))

 那珂は軽く頭をブンブンと振り、靄がかった負の思考を雲散霧消させる。そして二人の教育に集中することを改めて心に誓うのだった。