遊ぼうよ
今日はニュースでもやっていたように今年一番気温の高い、真夏日だそうだ。
時刻は午後1時前。仕事が非番ということもあって、今まで寝ていたのだ。
家にいても一人だと特にすることもないし、友人を誘おうかと思ったが、連絡が付かない。
というわけで、僕は寝ぼけた体を起こすために散歩しに外へ出た訳だけど。
暑い。
吸い込む息さえも生ぬるく、上からも下からも熱気が刺してくる。
外出しないほうがよかったな、そう思っていると近所の公園で子供たちの声が聞こえた。
実は僕、子供は好きなんだ。大人にはない特別な元気をいつも分けてくれるような気がするんだ。
「あ!ハロルド!あそぼー!」
声をどうやってかけようか、頭の中で考えている間に向こうから話しかけてきた。
「やあ、今日は暑いね。水は?ちゃんと飲んでるかい?」
僕はレスキュー隊員だ。困っている人を助けるのが大前提だけど、困る前に助けるのもレスキューだ。
「飲んでるよ!ほらっママが水筒持たせてくれた!ね、サッカーしようよ!」
「そうかい、それはよかった!あ~・・・暑いのによくやるねえ」
「・・・・ハロルドのくせに断るの?」
「い、いや断ってはいないじゃないか、サッカーだろ?今すぐに始めようじゃないか」
ふと、僕はそこで遠くの方から視線を感じた。
視線の感じた方を見ると、幼い黒髪の少女がそこにはいた。
僕は放っておけない気持ちになったので、その女の子に話しかけてみようとその子に近づいた。
「やあ!君はなんて名前なの?こっちにきて皆と遊ばない?」
できるだけ屈んで目線を子供にあわせて。これが一番怖がられないコツさ。
「………」
だんまり。こういう子は同僚のキャプテンがいつも相手してくれるなあ・・・。
「ねえ、僕と遊ばない…」
「………」
ダメだ。何を聞いても俯いて、目線すら合わせてくれない。夏なのに長袖を着て…。
僕はハッとした。真夏日に、親が子供に水筒を持たせるくらいだ。いくらなんでも長袖をきているなんてありえっこない。
まさか、この子は・・・・。
「お兄ちゃん、私と遊んでくれるの・・・」
か細く、小さく聞き取りにくい声。そのはずなのに背中には氷のようにヒヤッとした寒気がする。
「じゃあ鬼ごっこね、あなたが鬼。」
クスクス、そう愛らしく微笑みながら瞬きをした、瞬間にどこかへ消えてしまった。
この遊びは絶対に勝たないとあの子は報われないな。
これもレスキューの一環だと思って僕は、彼女を探すことにした。
公園を出て、少し歩くと大きな交差点に出る。交通量も多く事故が絶えない。
案の定、黒髪の彼女はその道路の向こう側にいた。
「なんだやっぱり子供の考えじゃないか」
横断歩道の信号は青い。このタイミングなら!
僕は駆け出した。もうすぐで渡りきる。彼女まであと――――。
ミーン、ミーン。ジリリリリリ・・・・。
時刻は1時。今日は真夏日だそうだ。
夢を、見ていた気がするけどなんだったかな。まあ散歩にでも行こうか。
クスクス、愛らしい笑い声がまた響いた。