擬かんしゃSS
【言わなきゃいい/へりろく】
空を飛ぶ君。いつものところで風に靡いてる茶色い髪。ぼくよりとても大きな手。
それらがずっとずっと、憧れで―。
「ね!聞いてよぼく、昨日の郵便配達でねとってもこわーい怪物に会ったんだ!」
「へえ、それは興味深いね。どんな風に怖かったんだい?」
「それはねえ――」
ジリリリリリ!緊急事態が起きたベルの音だ。
「パーシーごめん、これが終わったら続きを話してくれよ!」
「……それは泥にまみれたハロルドだったのにぃ……」
どうしようもなく、あの空の英雄と話がしたい。でもまたいなくなる。
まるで捕まえたと思ったら飛んでいく蝶だ。
エドワードに聞いた。蝶を飛ばせないためには標本にするって。
でも動かない蝶なんて意味がないんだ。生きた、目を引くその姿が好きなんだ。
「……ぼくはハロルドが好き?どうなの、ぼく?」
鏡に向かって問いかける。向こうのぼくも今のぼくと同じ顔をして答えてはくれない。
「…空を飛べる君、笑う君。ぼくは、ぼくはっ…好き、なんだ…」
心にある、茶色い髪を靡かす青年。ああ認めちゃったんだ、ぼくは。
そう理解したら急に恥ずかしい気持ちになった。
言わなきゃいい。この気持ちは、さっきの言葉は鏡の中のぼくとこのぼくの、共有する秘密なのだから。
空を飛ぶ君。いつものところで風に靡いてる茶色い髪。ぼくよりとても大きな手。
それらがずっとずっと、憧れで―。
「ね!聞いてよぼく、昨日の郵便配達でねとってもこわーい怪物に会ったんだ!」
「へえ、それは興味深いね。どんな風に怖かったんだい?」
「それはねえ――」
ジリリリリリ!緊急事態が起きたベルの音だ。
「パーシーごめん、これが終わったら続きを話してくれよ!」
「……それは泥にまみれたハロルドだったのにぃ……」
どうしようもなく、あの空の英雄と話がしたい。でもまたいなくなる。
まるで捕まえたと思ったら飛んでいく蝶だ。
エドワードに聞いた。蝶を飛ばせないためには標本にするって。
でも動かない蝶なんて意味がないんだ。生きた、目を引くその姿が好きなんだ。
「……ぼくはハロルドが好き?どうなの、ぼく?」
鏡に向かって問いかける。向こうのぼくも今のぼくと同じ顔をして答えてはくれない。
「…空を飛べる君、笑う君。ぼくは、ぼくはっ…好き、なんだ…」
心にある、茶色い髪を靡かす青年。ああ認めちゃったんだ、ぼくは。
そう理解したら急に恥ずかしい気持ちになった。
言わなきゃいい。この気持ちは、さっきの言葉は鏡の中のぼくとこのぼくの、共有する秘密なのだから。