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第二部 4(77)くちづけ

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固まったアレクセイを目にしたユリウスが、申し訳なさそうにその先を続ける。

「ごめんなさい。アレクセイ・・・・。最近ずっと体調が悪くて…今日昼間にとうとう倒れてしまって・・・・。お医者様に診て頂いたら…、その…恐らく妊娠三か月…だって言われて…。
ごめんなさい・・・・。ぼく、アレクセイにもアルラウネにも…とんだ足手まといだよね・・・・。
でもね…ぼく…産みたいん…キャ!?」

ポツリポツリとその時の状況を話し始めたユリウスを、アレクセイがギュッと抱きしめた。

「バカ!…何言ってんだよ…。何が…足手まといだよ!!びっくりした…正直すっげー驚いたけど…、嬉しいよ。何が足手まといなもんか!」

そう言ってアレクセイはユリウスの身体を抱きしめ、キスの雨を降らせて、大きな両手で彼女の金の頭をクシャクシャと撫でまわした。アレクセイのその返事と反応に、安堵と改めて子供を宿した喜びがこみ上げて来て、ユリウスの両の瞳から涙がとめどなく溢れて来た。

「アレクセイ・・・・アレクセイ…。ごめんなさい…」

「バッカ!謝る事なんか何も…何一つないんだよ。…俺たちは、愛し合って…子供を授かるような事をしたのだから…これは当然の事なんだ」

アレクセイは強く抱きしめた両手を緩めると、ユリウスの頬を伝った涙を指で優しく拭ってやった。

「だけどお前…さっき倒れたって言ったよな?健康は…大丈夫なのか?それに…お前こんなに細くて…ちゃんと子供が産めるのか?」

アレクセイの鳶色の瞳が不安そうに揺れた。
そんなアレクセイに今度はユリウスが力づける。

「ぼくは…大丈夫だよ。ちょっと貧血気味だと言われたけれど…それはこれから頑張って改善するように努めるから。それに…ぼくを産んだ母さんも細かったし」
― だから大丈夫!丈夫な可愛い赤ちゃんを産んで見せるよ。ねえ、信じられる?夏の終わりには…ぼくはムッターで、アレクセイは…ファーターになるんだよ!!

さっき泣いたカラスがなんとやら…ユリウスはまだ涙の跡の残る顔で、アレクセイに満面の笑みを向けた。

「ああ…。そうだな。ファーター…か。俺がな…。フフ。何だか…実感わかねぇな」

片手を揃えたユリウスの両手の上に置いて、もう片手でユリウスの細い肩を抱いたアレクセイが面映ゆそうな顔で笑う。

「ふふ…。実はぼくも…まだ全然実感がわいてない」

「なんだ…。実際に身籠ってるお母さんでも…そんなもんか」

「そりゃあそうだよ。だってまだお腹だってぺちゃんこだし」

そう言ってユリウスは自分の両手の上に置かれたアレクセイの左手をそっと取ると、自分の薄い腹部へとあてがった。

「このお腹が…夏ごろにはパンパンに膨らむのか…。想像できないな」

「うふふ…ぼくも」

「おい、ファーターだぞ。…聞こえるか?男の子でも女の子でもいいから、元気に生まれてくるんだぞ!ムッターもファーターも、お前に会えるのを楽しみに待ってるからな」

アレクセイがユリウスの腹部に顔を近づけて、彼女の腹部に宿った小さな小さな命に向かって話しかける。

「うふふ・・・・。何か…こそばゆいね」

「お前は…この子は男の子だと思うか?女の子だと思うか?」

「ぼくはね~、男の子だと思う!あなたによく似た…亜麻色の髪の男の子。可愛いだろうな~」

夢見るようなうっとりとした面持ちでユリウスが答える。

「お!即答だな~。母のカンってやつか?じゃあ…髪が亜麻色だったら…瞳はブルーだ。お前の瞳と同じ、夏の空と木立の色を混ぜ合わせたような鮮やかなブルーだ」

「いいねぇ」

「名前は…そうだな。ドミートリィ…。もしこの子が男の子だったら…ドミートリィとつけても構わないか?」

「うん。勿論。…いい名前だね・・・・。ねえ、ロシアの名前って、愛称があるんでしょう?あなたの場合は、アリョーシャ…だっけ?ドミートリィだと、何てなるのかな?」

「うーん。ミーチャ…かな」

「ミーチャ、ミーチャ。母様ですよ。聞こえますか?」

ユリウスが自分の腹部に歌うように呼び掛ける。

「おいおい。気が早いなぁ。まだ男の子と決まったわけじゃないんだぜ?」

「うん・・・・そうだけど~。何だか名前まで決まったら…この子男の子な気がしてきちゃって」

ユリウスが肩を竦めてペロリと舌を出した。

「はは・・・・。まあ、女の子だったら。。。その時考えればいいか。おい、ミーチャ。ドミートリィ。お前は生まれるまで暫定ドミートリィだぞ!」

アレクセイもおどけてユリウスの腹に向かって呼びかけた。

「さて、と。俺アルラウネ迎えに行ってくるわ。…いつものカフェだろう?」

「あ…うん」

アレクセイが長椅子から立ち上がると、コート掛けからコートを取って羽織る。

「ぼくも行く!」

「冷えるぞ?」

「大丈夫!ホラ!ちゃんと下にも穿いてるし」

ユリウスがスカートをはぐってアレクセイのズボンを見せた。

「アハハ…。今にして思うと、それは大正解だったな。ヨシ、冷えないようにちゃんとコート着こんで来い。マフラーもだぞ」

「分かってる~」

ユリウスがドレスの上にオーバーコートを着こみ、マフラーを髪の上からグルグルと何重にも巻きつけた。

「まあいいだろう。― 行くぞ」

アレクセイの差し出した手をユリウスがギュッと握りしめる。

「うん!」

― あ、そこ。階段気をつけろ。

部屋を出た二人の靴音が、北の街の冬空に響き渡った。