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I belong to you.

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I belong to you.


U .C .0093年3月12日
ネオ・ジオン総帥 シャア・アズナブルは幾多の戦いを経ても、依然変わらない地球連邦政府のスペースノイドに対する圧政と地球への汚染を食い止めるべく、新生ネオ・ジオンを率いて反乱の狼煙を上げた。
その第一歩として、地球連邦政府の拠点であるチベットのラサに小惑星5thルナを衝突させた。
そして、地球に残る全ての人類を宇宙に上げるべく、地球に小惑星アクシズを降下させる作戦を実行したのだ。

アクシズの降下を阻止する為、ブライト・ノアとアムロ・レイの率いる、地球連邦軍 外郭新興部隊ロンド・ベルはネオ・ジオンに総攻撃を行い、同時にアクシズを内部から爆破し二つに分断する作戦を実行した。
作戦は成功したかに思われたが、分断されたアクシズの後方部は地球の引力に引かれて落下を始めてしまった。
シャアとのモビルスーツでの一騎討ちに勝利したものの、アクシズの落下を許してしまったアムロは無謀にも己のνガンダムでアクシズを押し返そうと先端に取り付きバーニアを全開にする。そして、その手には宿敵であるシャア・アズナブルの乗ったサザビーの脱出ポッドがあった。
アムロはそのポッドをアクシズに表面にめり込ませると、ガンダムで覆い被さるように庇いつつアクシズを押し上げる。

「正気か!?アクシズの落下は始まっているんだぞ!!バカなことはやめろ!」
身動きできない状況下でシャアはアムロへと叫ぶ。
「やってみなくちゃ分からないだろ!」
落下による摩擦熱に晒され、νガンダムの表面が赤く染まる。
「アムロ!何故そこまでする!?何故!お前はその力を連邦の為などに使う!!誰よりも連邦の醜悪な部分を知るお前が何故!?」
たった15歳で戦争の最前線での戦いを強要され、その後はニュータイプ研究の為だとモルモットの様に酷い人体実験の被験体となり、果てには危険人物だと7年もの長い年月シャイアンでの幽閉を強いられた。
「…連邦の為なんかじゃないよ…。」
絞り出すような声でアムロが呟く。
「何?何と言った?」
「…連邦の為なんかじゃないって言ってるんだよ!大体1年戦争の時だって連邦の為に戦ってたわけじゃない!あの時はただ自分が…ホワイトベースの仲間が生き残る為に戦ってただけだ!連邦の為とか人類の為とかそんな大それた事考えた事も無かったよ!!」
吐き出す様に叫ぶアムロにシャアが困惑の色を顔に浮かべる。
「ならば、今回は?…今は…何故こんな事をする?地球にいる誰かの為か?」
「…それもあるよ。地球にはセイラさんもミライさんも…大切な子もいる…。けど…」
「けど?」
アムロはアームレイカーを握る手に力を込めるとモニター越しに見える赤い脱出ポッドを見つめる。
「…たの為だよ…」
「アムロ?」
アムロはヘルメットを脱ぐと髪を掻きむしりながら叫ぶ。
「貴方の為だよ!!」
その叫びにシャアは一瞬何を言われたか理解出来ずにただ言葉を失う。
「私の…為?どういう事だ…?」
「貴方がバカな事するから!!」
アムロの頬を涙が伝う。
「こんな事をして、傷付くのは貴方じゃないか!なんで貴方が人類の業を背負わなきゃいけないんだ?ジオン・ダイクンの子だからか!?そんなの貴方に関係ないだろ!!」
「アムロ!?」
シャアにとって、父ジオン・ダイクンの意思を継ぎ、スペースノイドの独立の為にその身を尽くすのは当然の事だった。…いや、そうあるべきだと…そう言われて育ってきた。それが当たり前だと…。
しかし、アムロにそう言われて、ふと、どこまでが本当に自分の意思だったのかという疑問が脳裏を過る。
「貴方がしている事は…求めるものは理解できる。でも、皆の期待や希望に縛られて…雁字搦めになった貴方が…追い込まれてこんな極端な行動に出てしまうのを止めたかったんだ!」
アムロの瞳からは涙が次々と溢れ出す。
「アムロ…何故君はそうまでして私を…」
アムロの涙の気配を感じ、シャアは戸惑いながらも問う。
「…知らないよ!でも!貴方は!…15の時からずっとオレの前にいて…ずっと…追いかけてきたんだ!」
「アムロ…」
「オレは貴方に人の心の暖かさを知って貰いたい、貴方に…みんなに知ってもらいたい!アースノイドとか、スペースノイドとか関係ない!!ただ…人の暖かい心を!!」
叫ぶアムロの身体から緑色の光が溢れ出しνガンダムを包み込む。そしてその光はシャアの脱出ポッドをも包み込んだ。
「何だ?この光は?これは…サイコフレームの共振か?アムロの…人々の想いがサイコフレームの共振を増幅させたのか?」
その暖かい光の中にシャアはアムロの心とアムロ同様アクシズを押し上げる多くのモビルスーツパイロット達の…そして地球に…宇宙にいる人々の“地球を守りたい”という心を感じ取る。
ふと顔を上げると、目の前に宇宙が広がり、そこにアムロがコックピットのシートに座り、涙を流しているのが見える。
そのアムロがこちらに気付くと、ゆっくりと立ち上がり、歩いてくる。
その姿はノーマルスーツから制服に変わり、そしてカラバで戦っていた頃の黒いジャケットに変わる。そして、目の前に来た時には1年戦争の頃の少年兵の制服を着た15歳のアムロがいた。
アムロはシートに座るシャアの頬を両手で包み込むと、そっとその頭を自分の胸に抱き締める。
「シャア…貴方が…大切なんだ。貴方を支えたい。でも…僕は貴方からララァを…大切な人を奪ってしまったから…。」
悲しげな表情をするアムロを見上げ、思わずその細い腕を掴む。
「ごめん…」
「アムロ?」
「…ずっと…謝りたかったんだ。貴方がララァを戦いに引き込んだからって貴方の所為にして自分の罪から逃げてた…。本当はわかってたのに…。僕の罪が消えるわけじゃないって。」
やっと言えたと、悲しげに笑うアムロを思わず引き寄せて抱き締める。
「シャア…!?」
その幼いアムロの姿に、こんな子供にあんなに辛く、重い罪を背負わせ、長い間苦しませていたのだと思うと胸が締め付けられるように痛んだ。
「君だけが罪を背負う事はない。私も一緒に背負おう。」
シャアの言葉にアムロは驚いた顔をするとフッと微笑む。
「ありがとう…。でも、背負うのはオレだけで良いよ。」
気付くとアムロの姿は今の29歳のものに戻っていた。
そして、笑いながらシャアに言う。
「アクシズはオレが何とかする。だから貴方はもう自由になって…」
アムロがそう言った瞬間。目の前が緑色の眩しい光に包まれた。
「アムロ!?」
その光は奇跡を生み、アクシズを包み込むとその軌道を変えさせた。
そして、勢いをつけた光は地球をぐるりと巡り、多くの人々に暖かい心の光を届けたのだった。



それからどれくらいの時間が経ったのか、シャアは気を失っていたらしく、気付いた時には辺りはシンと鎮まり返っていた。
「痛っ…。」
激しい振動で全身を打ち付けた為、身体中が痛む。そして、大気との摩擦による熱で脱出ポッド内が高温になった事により、脱水症状を起こしたのか頭がフラつく。
「どうなった?アクシズは…地球に落ちなかったのか…?」
状況を判断しようとするがカメラは摩擦熱で死んでしまったらしく、モニターには何も映らない。
作品名:I belong to you. 作家名:koyuho