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のび太のBIOHAZARD カテゴリーFの改造版 2

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 外を探索している太刀川とジャイアンは、次の場所へ向けて車を走らせていた。

「大量、大量!」

 助手席に座るジャイアンが、自分の四次元カバンの中から缶詰食品をひとつ取り出し、満足気につぶやく。寿司屋のほかにも周辺のコンビニやスーパー等も回ったようで、カバンの中には大量の食料・食材が入っていた。

「これだけあれば俺様が腕を振るえるかもな……」

 ジャイアンは頭の中でレシピを考え、軽くシミュレートを始める。

「何だ、お前料理が趣味なのか?」

 そこへ太刀川が声をかけてきた。見かけによらず家庭的な趣味をもっていることに驚いているようだ。

「はい。みんなからの評判も結構よくて……特にジャイアンシチューは自信作なんだ」
「ほう、ジャイアンシチューか。俺もシチューは大好物だからな。是非とも食ってみたい」

 ジャイアンの自信作がシチューと聞いた太刀川が、目の色を変えてとんでもないことを言い出した。ジャイアンシチューの恐ろしさを知らないが故の過ちだ。

「シチューの材料はそろってるから、戻ったら作ります。寿司と一緒に食べましょう!」
「あぁ、頼む」

 ジャイアンもすっかりやる気になっており、今日の夕飯はジャイアンシチューに決定してしまった。

「……っと、そうこうしてる間に到着だ」

 そう言いながら、太刀川は四階立ての小さなビルの前に車を止めた。
 ビルの正面入り口の横には木製の看板が掛かっており、“関東狩武会練馬支部”と毛筆で記されていた。見るからに暴力団事務所である。

「行くぞ。ここならそれなりに武器が揃っているはずだ」
「はい」

 二人は車から降り、事務所内に足を踏み入れた。
 彼らの目的は武器の入手だ。ここなら他の組との抗争に備えて用意された銃器や弾薬等が手に入るだろう。
 建物内には、腕や胸元に刺青が彫られた、この事務所に所属する暴力団構成員の成れの果てであろうゾンビが三体と、のび太たちが保健室で倒したものと同種の巨大ノミがうろついていた。
 ゾンビたちは来客の姿を確認すると、一斉にそちらへ向かう。巨大ノミのほうはまだ彼らには気づいていないようで、マイペースに死肉を貪っている。

「俺はあっちにいるノミを殺(や)るからお前はゾンビのほうを頼む」
「わかりました」

 分担を決め、戦闘体勢に入る二人。

「どりゃぁぁぁぁぁぁ!」

 ジャイアンが自分に向かってくるゾンビたちの頭部にフルスイングを叩き込む。小学生離れした怪力によるフルスイングを受けたゾンビたちは、グシャリ、という鈍い音ととも頭が潰され、身体もその衝撃で床に叩きつけられた。

「そこを通してもらうぞ」

 太刀川が左腰に装備したマグロ包丁に手をかけながら、巨大ノミの方へツカツカと歩み寄る。ノミも彼の接近に気づき、鳴き声を上げながら彼のほうにに飛びかかってきた。
 太刀川は歩みを止めずにマクロ包丁を鞘から抜き、巨大ノミをすれ違いざまに斬りつけた。巨大ノミは身体が斜めに真っ二つになり、彼の後ろで床に落下した。

「よし、片づいた。まずはこの部屋から調べるぞ」
「は、はい……(すっげぇ……)」

 そのまま手近な部屋へと歩いていく太刀川。
 その後ろをついていくジャイアンは、ただただ恐れ入るばかりであった。剣に関しては素人のジャイアンだが、そんな彼でも太刀川の剣技の凄まじさを感じ取っていた。実際、巨大ノミを一太刀で斬り捨てたマグロ包丁には血の一滴もついておらず、一欠片の刃こぼれも無い。まさに達人技であった。

「このロッカーは……おぉ、いきなりビンゴだ」

 太刀川が早速室内にいくつか並ぶロッカーを順番に開けてみると、中からスナイパーライフル“L96A1”と7.62×51mmNATO弾10発入りのスペアマガジン3本、アサルトライフル“M16”の短銃身化モデルであるアサルトカービン“M4A1”と5.56×45mmNATO弾30発入りのスペアマガジン3本が出てきた。また、アサルトカービンにはアタッチメントとしてアンダーバレルグレネードランチャー“M203”が装着されており、40×46mmグレネード弾も6発用意されていた。
 強力な火器を三種類も発見した太刀川は、うむ、と満足そうに頷いてそれらと弾薬を四次元カバンに詰め込んだ。

「こっちの机には何かあるか……?」

 ジャイアンが机の引き出しを開けてみると、50口径のマグナムリボルバー“S&W M500”と.500S&Wマグナム弾10発が見つかった。

「おぉ、これは俺様好みの立派なマグナムだぜ!」

 西部劇に登場するガンマンのようにマグナムをクルクルと回転させるジャイアン。

「立派なマグナム、か。意味深だな」
「ん? 意味深?」

 太刀川の唐突な独り言にジャイアンが思わず反応した。

「いや、何でもない。それより探索を続けるぞ。他にも武器やスペアのマガジンがあるだろうからな」
「そうですね」

 ジャイアンがマグナムの別の意味を知るには十年早い。太刀川は探索の続行という尤もらしい理由をつけ、どうにかはぐらかした。

「……ん? スペアのマガジン?」

 ところが、ジャイアンはまたしても太刀川が何気なく発した言葉にひっかかりを覚えた。しまった、またやっちまったか、と心の中で失言を悔い、太刀川は軽く頭を掻きながら、脳細胞を総動員して次はどうはぐらかすかを考える。

「スペア……スペア……そうだ! スペアポケットだ! 何で今まで思いつかなかったんだよ俺!」
「スペアポケット? 何だそれ?」

 だがジャイアンが発したのは初めて聞く単語であったため、その必要は無かった。

「ドラえもんが持ってる四次元ポケットのスペアです。スベアポケットはドラえもんのポケットとつながってて、その中にあるひみつ道具を取り出せるんです!」

 顔を輝かせながら太刀川にスペアポケットの説明をするジャイアン。

「なるほどな。そいつで“どこでもドア”でも取り出せば、すぐにでもこの化け物パラダイスから脱出できるってわけだな」
「はい! 確かドラえもんの寝床になってるのび太の部屋の押し入れの中にあるはずです!」
「そうか。じゃあ早速出発だ。道案内は頼んだぞ」

 脱出手段が見つかった今、この事務所にもう用は無い。二人は探索を打ち切って外に出、車に飛び乗った。目指すは野比家。希望の光は、そこにある……。