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Revenge

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「ちょっと、私の真似しないでよ」
 そう言って真壁はぐっと距離を詰めてきた。意志の強い黒瞳に、とらわれる。
「……真似?」
「そう、あれは私の専売特許」
 女は顎を軽く上げ、見下すような視線で、わざとらしくむくれてみせた。

 得意げに専売特許などと語るのは、梅雨入り前のまだ涼しい季節に彼女が単身で遂行した“作戦”のことだろう。客の女性たちを自分の信者に仕立て上げたネイリストが、金を巻き上げ、自殺へと導いた。その背景には、愛憎のもつれによる過去の未解決事件までもが潜んでいた。
 海千山千の同僚たちの手のひらで踊らされていたとはいえ、真壁の手柄で解決にたどり着いた事件だ。本人も、刑事としてかなり気を良くしている取り調べのひとつに違いない。
——好きになってはいけない人を、愛してしまって。
 こちらとしては、不愉快極まりなかったが……
「うぬぼれるな。真似じゃない」
 その不快感を噛み潰すように、あるいは、苦みを感じぬうちに丸呑みするように……ささやかな意趣返しを、してみたくなる。

「君のは芝居だろう。俺は本心だ」
「……は?」
 生意気に細められていた目が、瞬時に見開かれる。気を張った姿ばかりを見ているせいだろうか。こんなにあどけない顔をするんだなと、仕掛けたこちらが驚かされた。予想を上回る反応に、つい、調子に乗ってしまう。
「それとも……君も本心だった、とか」
「はあ!? そんなこと、あるわけないじゃない」
 バカじゃないの。そう言い捨て、そっぽを向いて歩きだした背中を眺めながら、込み上がる笑いを喉の奥で押し殺す。

 平気な顔をして、一人悩めばいい。
 ふとした瞬間に思い出して、心をかきむしられるといい。
 どんな真意で言ったのだろうかと、自分の中には存在しない答えに、もがき続けるんだ。
 お前が俺の心を蝕んだように、わずかひとときだけでも、お前の心に座せればと願う。
 悪趣味なのかもしれないが、お互い様だ。俺という“理解者”がいる分、お前のほうがまだ救われているだろう。感情を顔に出してしまえる厚かましさにも、腹が立った。
作品名:Revenge 作家名:みやこ