飲んではいけない
「ありがとうございます」
直接話したいことがある。
そう言われ、帝人はその日、新宿にある臨也のところにいた。
部屋に入り、椅子を勧められ、勧められるまま腰を下ろした。
少しの間を置いて出されたのは、コップに注がれた白い飲み物。
気になったことと言えば、臨也の分は無く、帝人の分だけ用意されていることだ。
「臨也さんは飲まないんですか?」
「うん。甘いの苦手だから」
帝人の問いに、臨也は笑顔で答え、言葉を続ける。
「人から貰ってね。困ってたんだ。だから飲んでくれると助かるな」
「そう、なんですか」
「うん」
「じゃあ、いただきます」
そう言って、帝人は出された飲み物に口をつけた。
口の中に広がるのは甘さと炭酸独特の感触。
そしてもう一つ、帝人の知らない感覚が口に広がった。
苦いようで、甘い。
けれど今まで飲んだジュースより、甘みの少ないもの。
そして、今までに味わったことのない変化が帝人の体を襲いはじめた。
「…帝人君ってさぁ、騙されやすいタイプ?それともただ無防備なだけ?」
「え…?」
くらくらする視界の端に映ったのは、冷たく笑う臨也の顔。
落ちそうな瞼を必死に開きながら、帝人は臨也の顔を見た。
「それね、お酒。アルコールに慣れてないのに、そんなに一気に飲んだら大変なことになるよ?」
くすくすと笑う臨也。
それを瞼の裏に残し、帝人はテーブルへと倒れこんだ。