誕生日
次に、向けられる言葉が優しいものばかりだから、嬉しくなった。
最後の決め手は、親愛とも友情とも違う言葉を向けられたこと。
そんなやり取りを経て生まれた関係は、恋愛と呼ばれる関係だった。
***
「山本、どこ行きたい?」
「そうだなー、公園でも行く?」
「うん」
そんな会話をしながら、山本とクロームは並盛の道を歩いていた。
山本の手にはコンビニの袋、クロームの手には少し大き目のトートバックが握られている。
ぽかぽかとした日差しの下、二人は公園へと足を向ける。
「晴れてよかったね」
「だなー。
せっかく弁当作ってくれたのに、外で食べれないとかもったいないもんなー」
「そうだね」
そう言いながら、山本はクロームの手元に目を向ける。
中身は山本がリクエストした、クローム手製のお弁当。
誕生日に欲しいものとしてリクエストしたものだ。
「ごめんね」
突然クロームがそんな言葉を口にした。
それまでのやり取りを考えると、突拍子のない言葉に山本は思わず「何が?」と聞き返した。
「…うまく話せなくて」
「そっか?普通に話せてると思うけど」
「そうかな?」
「うん」
「良かった」
そう言って、クロームはほほ笑む。
滅多に見られないその表情に、山本は思わず顔をそむけた。
「どうしたの?」
「…急に笑顔は反則…」
「?」
小声での山本の言葉を聞き取れなかったのか、クロームは首を傾げる。
「大丈夫?」と心配して声をかけると返ってきたのは「大丈夫」という答えが返ってきた。
そして、ひとつの深呼吸の後、クロームへと向き直った。
「じゃあ行こうか、公園」
「そうだね」
「いいとこ空いてるといいなー」
「うん」
そんなやり取りを繰り返しながら、山本とクロームは公園へ足を進めた。