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決意も新たに! ライダー!

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2.後編



「もっと速く走れないアルか! 追いつかれるアルよ!」
「これでアクセル全開です!」
「あっ、あれは何アルか?」
「あれは高徳院阿弥陀如来座像、俗に言う鎌倉の大仏です!」
「あれを使うアル、車を止めるヨロシ!」
「使うって……罰が当りますよ!」
「日本の仏教は中国伝来よ! 中国人の為に使うなら罰なんか当らないアル!」
「そ、そんな無茶な……」
「いいから車を止めるアル! さもないとワタシが罰を当てるアルヨ!」
「は、はい」

 ジープから飛び降りたフー・マンジューは大仏によじ登ると、鼻の下でひょうたんの栓を抜いた。
「お前達! 今度はこれに宿るアル! ライダーどもを踏み潰すヨロシ!」

 ゴゴゴゴゴ……。
 重々しい音を立てて大仏が立ち上がった。

「な、何だ! あれは!」
「大仏が動いている!」
「もちろんフー・マンジューの仕業よ! あれだけの巨体を動かすには六柱の魂全部が必要な筈!」
「むしろ敵が一体にまとまってくれたんだ、好都合じゃねぇか」
「しかし、マッスル、大仏を相手に闘うというのか?」
「うっ……確かに……重要文化財だしな」
「来るぞ!」
 大仏の足払い、一見動きはゆっくりだが巨大な分実際のスピードは速い、ライダーたちの身体能力をもってしても避けるのが精一杯。
「参ったな、どうやって闘う?」
「とにかく止めるしかないだろう? 俺がやってみる」
「あ、待て、マッスル! 無謀だ!」
 走り寄るマッスルに大仏の正拳突き降ろし!
「きゃぁ! ダーリン!」
「マッスル~ッ!」
「見ろ! なんて力だ、受け止めてるぞ!」
 マッスルはその正拳を頭上で受け止めて耐えていた。
「ぐ……くそ~!」
 ズン!
 かろうじて正拳を受け流して潰されずに済んだものの、マッスルは瞬時に持てる力を使い果たして膝をついてしまう。
「こうなったら仏だ重文だなんて言っていられない! ライダー・キック!」
「レディ9、早くマッスルを……フックアーム!」
 ライダーとライダーマンが奮闘して大仏を止めている間に、レディ9とセイコはマッスルを物陰に引きずって行った。
 
「くそっ、クッシーの比じゃないぜ……もう大丈夫だ、ライダー達と一緒に闘わなければ」
「待って、マッスル、あなたはあの中の一柱と知り合いだったわよね?」
 セイコが真剣な表情で尋ねる。
「ああ、元部下だった中沢と言う男だ、モグラ男に改造されて記憶もなくなっていたようだが洞窟での闘いで自爆させられる時、俺とライダーが爆発に巻き込まれないように自分で洞窟の入り口を塞いでいた岩にもぐりこんで、逆に岩を砕いて助けてくれたんだ、あんな良い奴をあんなふうに使って死なせた死神博士を俺は許さない」
「外科手術的に記憶を消されていても心は残っていた……彼の魂に働きかけて大仏を止められるかも」
「え? それはどうやって?」
「レディ9、お線香は残ってない?」
「一束だけ燃え残ってるけど……」
「それで十分」
「どういうこと?」
「説明は後よ、マッスル、今、中沢さんの魂とあなたの魂を繋げるから、語りかけてみて」
「だが、俺は闘わないと」
「ううん、大仏を止められるのはあなたしかいないの!」
「わかった……中沢に語りかければ良いんだな?」
「今、繋げるわ……レディ9、お線香に火をつけて」
「ええ……はい」
 セイコがそれを片手に、呪を唱えると、煙は生きているかのようにマッスルの体に巻きつくと、更に大仏の鼻へと伸びて行った。
 まるでマッスルと大仏が煙の紐で繋がれたかのように……。

(中沢、中沢、そこにいるのか? いたら応えてくれ、俺だ、納谷だよ、おい、中沢、中沢……)
(……せ……ん……ぱ……い?)
(中沢! 聞こえたのか、洞窟では助けられたな)
(そんな……こと……)
(中沢、お前は本当は心のまっすぐな男だ、フー・マンジューの、ショッカーの思い通りに動かされて良い男じゃない)
(せん……ぱい……)
(今、お前と一緒に大仏を動かしているのは俺たちが倒した怪人、心までショッカーに支配されていた怪人だ、お前は奴らとは違う)
(……)
(頼む、大仏を操るのはやめてくれ、お前の力でそれが出来そうか?)
(……やって……みます……)
(そうか! 俺に何か出来る事はないか? 何でもするぞ)
(このまま……おれと……つながって……きあいをいれていて……ください……)
(わかった! 中沢、頼む、お前が頼りなんだ!)
(う……おぉぉぉぉぉ……)

「どうなってる? 大仏の動きが……」
「ああ、両手両足の動きに統制が取れていない、バラバラだ」
「ライダー! ライダーマン! 出来るだけ大仏を元の位置に!」
「セイコちゃん! これは一体?」
「説明は後よ! 出来るだけ元の形に」
「わかった! ライダーマン!」
「おう! ライダー! 行くぞ!」
「ライダー・キック!」
「ロープアーム!」

 動きがばらばらになった大仏はよろよろとよろけ、元の台座にずしんと尻餅をついた。

(中沢! 頑張ってくれ! もう少しだ!)
(うおぉぉぉぉ……)

「ライダー! 君は右手を! 私は左手をロープで止めておく」
「わかった! ライダー・パンチ!」
「やった! 大仏はこれで元通りだ!」

(中沢! やったぞ! お前のおかげだ! おい、中沢、聞こえてるか? 中沢、中沢!)
(せん……ぱい……ありが……とう……ござい……ます……)
(何を言ってる? 礼を言うのはこっちだ……中沢、大丈夫か?)
(これで……ほんとうに……じょうぶつでき……ます)
(おい、逝ってしまうのか? 中沢、おい、中沢……もう聞こえていないのか? おい!)

 その時、セイコがマッスルの手をそっと取った。
「中沢さん、成仏したわ……他の五柱といっしょに……」
「……もう奴とは話せないのか?」
「ええ……」
「そうか……残念だよ、もっと話していたかった……」
「彼らは無念の死を遂げたばかりに冥界に辿り着けずにいたの、それをフー・マンジューに利用されたんだわ」
「無念の死……俺達のせいか……」
「それは違うと思う……きっとみんな怪人になんかされたくなかった……中沢さんほどじゃなかったかも知れないけど他の五柱にも心は残っていたんだわ……だから大仏は元の形にまで戻れたんだと思う」
「今度こそ本当に成仏できた……そういうことなのか?」
「ええ……もうマンジューの魔術は届かない……私の陰陽道も」
「そうか……中沢は……満足して逝ったんだろうか……」
「きっと……」
「そうか……」


ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!


「セイコちゃん、さっきのはどういうことだったの?」
 マンジューには逃げられてしまったが、ショッカーの企みを退けることが出来たライダーチームは、無事にアジトに帰りついた。
 そして、ねぎらいのコーヒーを運んで来た志のぶは晴子に事の次第を尋ねたのだ。
「お線香の煙と香りはこの世とあの世を繋ぐだけでなく、生きている人と亡くなった人を繋げる力もあるの……中沢さんに心が残っていて、生きている時、剛さんと心の交流があったのなら、お線香で繋がればきっと響きあうと思ったの……」
作品名:決意も新たに! ライダー! 作家名:ST