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中尾かなこ
中尾かなこ
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夢で逢いましょう〜そして現実で〜1

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その日は、やっと大きな街につきリナたちは一同は、野宿していたため、フカフカのベッドで寝るのは本当に久しぶりであった。
リナが眠れない日があるとは珍しい。
リナだけではない。アメリアも、眠れなかった。
二人部屋を取っていたため、珍しく二人で外に出てみた。
その提案をしたのは、アメリアだった。外といっても、浮遊(レビ・テーション)で、宿の屋根の上に二人でいた。

「ねえ、アメリアいつもこんなことしているの?」
「いつもじゃありませんよ。眠れない時だけです」
「でも。あんたしょっちゅう、いないじゃない。知ってるのよ〜ゼルガディスの部屋の上に行ってるでしょ〜」
それを告げるとアメリアは、タコのように真っ赤になった。
リナもおもしろ半分でからかう。
「そんな事ないですよ〜」
真っ赤になったままアメリアに告げた。
「あら〜、アメリアが顔が真っ赤よ!」
「リナさん」
さらに抗議するアメリア。
「でも、最近ゼルガディスの雰囲気柔らかくなったわよね。あの頑固なゼルがあんたの言う事だけは聞くんだもの。すごいわよ」
リナが真面目に話しだす。
ゼルガディスは、人間不信に陥った時期があった。
その頃の彼と比べれば、彼は明らかに変わった。アメリアと旅をするようになってからはまるで変わった。
基本は、無愛想で外見は怖いところがあるが、そこにアメリアが加わってから彼は多少なりとも変化が起こったのだ。
「アメリアがねえ…。今じゃ、あんたを連れて図書館へだって行くもんね」
そう、どこへ行くにも彼女を連れて行く。
とは言っても、勝手に彼女がついていくのだが。
「私が勝手について行ってもだけで、きっとゼルガディスさんにとっては迷惑ななだけです」
ちょっと、気落ちするアメリア。
冷たい夜風が、彼女とリナの髪にいたずらする。
リナは髪を抑えながら、更に話を続きをした。
「そんなことはないでしょ。アメリア、分かんないの?」
驚いた顔をしてアメリアの顔を見る。
本当に分かってないらしく、リナは呆れた。
「あのゼルの横にいることがどんだけすごいことか…」
「あのゼルって…、リナさん」
「あのね、魔竜王ガーヴの時も、ダークスータのときもいつも彼の隣にいたのはあんたでしょう!」
ビシっと指をさして宣言するだけ。それに目を丸くするアメリア。
「それはそうですけど、あの時もたくさん迷惑かけちゃったし」
「あのね〜、アメリア。いい加減にしなさいよ」
じれったそうにリナが、アメリアに詰め寄った。
「あのゼルは、アメリアに心を許してんのよ。私やガウリィでも分かるのに!!」
「え〜と…」
当の本人がこれでは、ゼルが気の毒になってくるリナ。
あれだけ、バレバレな雰囲気を醸し出しているというのに。何故、この娘には分からないのか?
「ええい〜じれったい!!」
夜中だと言うのに、大声で叫ぶ。
「ゼルもあんたを気に入っているということ」
はっきりと宣言する。
アメリアがまた、頬を朱に染めていく。今度は、リナの言葉に反応して。
「ーお前が言うな!」
いつの間にいたのか、ゼルガディスが立っていた。
「あら、ゼルちゃんいたの?!」
わざとらしく、リナがとぼける。益々。真っ赤になっていくアメリア。
そりゃ、そうだ。
噂していた張本人が目の前にいるのだから。
「何、人の部屋の上でキャーキャー騒いでんだ」
「どうしたんだ?」
ガウリィまでも出てきた。まあ、あれだけ部屋の真上で話をしていれば、気づかないはずがない。
「女同士の秘密♡」
とリナは言ったが、下まで会話は筒抜けだったようだ。ゼルガディスが大きなため息をつく。
「話は聞こえてたぞ。あまり、アメリアをからかうな」
「ゼルガディスさん、全部、聞こえてたんですか?」
「そりゃー、あれだけ大声で話してたらな。リナがからかってたんだろう」
ガウリィがアメリアを慰める。ガウリィにとってみれば、アメリアが気の毒なくらいであった。
「こら、リナ。ゼルガディスの言うとおりだぞ」
ポンとアメリアの頭に優しく手を置く。
その光景を見ていたリナとゼルガディスがムッとしたことには、ガウリィはきづいたかもしれない。
アメリアも、自分のことに精一杯で二人の態度には気付かない。
「女の会話に、男が入ってこないでよね!」
「だからってな…」
「ガウリィは黙ってて!ゼルも」
今度は、リナがムキになった。
「とにかく、乙女の話に男どもが入らないのって言いたいんだけど、私たちも途中から大きな声で話してたし。ゼル、後よろしく!」
ガウリィを連れて、リナはその場を去ろうとした。それをアメリアが慌てて阻止する。
「行かないでくださいよ〜リナさん」
何とも情けない声。二人きりになるになるのは、照れくさかったのだろう。
(頑張りなさい。ほんの少し勇気を出すってのも、正義なんじゃないの!)
小声でアメリアの耳元で囁く。“正義”という言葉にう弱いアメリア。
やがて、リナとガウリィは下の食堂に行ってしまった。残されたのは、ゼルガディスとアメリア。

ゼルガディスが突然座りだす。
そこへ隣へ座るようにポンポンと自分の隣を叩く。自分の隣へ座るように合図したのだった。
「とりあえず、落ち着いて座れ」
アメリアも照れながら座る。夜風が冷たい。
先程よりも、風が冷たく感じた。アメリアは、素直に、彼の傍に座った。
「あのう…、ゼルガディスさんさっきの話」
「ー聞こえてたぞ。全部」
「あうう…」
ゼルガディスは、まっすぐ夜空を見つめながら告げた。
「まあ、何だ?俺がお前を気に入ってる事は確かだ」
え?今、何て?
ゼルが照れている。ぞっぽを向いていた。アメリアは耳を疑った。
「ーじゃなきゃ、この俺が誰かを連れて旅なんてするか!!」
「リナとガウリィのように、いつの間にか俺にはお前がとなりにいないと落ち着かなくなっちまった」
アメリアはゼルの話が夢じゃないかと思い、ほっぺをつねった。ー痛みがある。
夢じゃない!これは現実。

いつもは夢で後ろ姿の彼を追いかけていた。
目が覚めると、いつもゼルがきえてしまう。
もう少しで、手が届きそうで、いつも届かない。

それがもう夢じゃない。
これが現実。

「私の片想いだとずっとおもっていました」
アメリアの声が涙声になっていく。それに気づいたゼルが、その涙を拭い去ってやる。
お互いがお互いをを必要としていた事が分かった。
「これからも、俺の傍にいろ。一人で抱え込むんじゃない」
ゼルが照れながら、アメリアを抱き寄せた。

夢でもう焦がれなくていい。
これからは、リナとガウリィのように一緒にいていいのだ。

「これでよかったのか?リナ」
「やっと二人、くっついたわね。本当はやきもきずーっとしてたいたのよ」
「でもちょっと強引だったんじゃないか」
「いいのよ。ゼルってば、全く素直じゃないんだもん。アメリアも、変なところ奥手だし」
二人を見守っていたリナとガウリィが空へ浮きながら会話していた。リナとガウリィも二人の気持ちには。薄々気付いていた。
二人ともどうにかしてやりたいかったが、機会がなかったのだ。
「これで良かったのよ」
(良かったわね、ゼルガディス、アメリア)
リナは心の片隅で、二人のお祝いの言葉を贈った。