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スターサイドロマンス

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扉が開き突風が吹いた瞬間はさすがに死んだと思ったね。
 だが結局のとこオレは死にはしなかったし、人生に風穴ってやつをぶち空けることもできやしなかった。
 瀕死の状態で病院にぶち込まれて借金背負わされて、実家に泣き付いて借金肩代わりしてもらって、親父にしこたまぶちのめされた。
 親ってのありがたいもんだね。方々に頭を下げてくれて死ぬほど嫌いだった田舎で就職口を見つけてくれて、オレはもう髪を脱色することもなく、おとなしく勤め人にあいなった。それならそれで結構やっていけなくもないもので、オレは次第に都会での暮らしを忘れていった。

 あるただ一点の傷を除いて。

 傷ってのはあれだ。オレと一緒にあの道を最後まで歩いたあいつ。
 伊藤開司。
 あの後あいつはどうなったんだろうな。
 死んだかな。
 オレみたいに死にはしなかったかな?
 それだけが気になって、でも確かめるすべもない。そんなある日、親戚の結婚式が東京であったんだ。
 なんとなくだけどあいつに出くわしそうな気がして、イヤイヤそんなはずはないなんて自分に言い聞かせてみたりして、それでもあきらめがつかなくて、オレは懐かしいあの街に降りてみた。すると、驚いたことにいたね、あいつが。変わり映えのないあの姿のまんま。だらしなく伸びたばさばさの黒髪で。
 オレは声を掛けようとして……のど元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
 ひょっとしたら向こうから気づくんじゃないか。奴が一歩近づくごとにずきんずきんと腹の中が痛む気がした。
 カイジはオレに気づくことなく通り過ぎた。
 オレは店のショーウィンドウに自分の姿を映してみる。しゃれっ気に乏しい地味なだけの短く切りそろえた髪、変わり映えのしないお仕着せの礼服、セーガクの頃のオレが心底忌み嫌っていたはずの、どこにでもいる大人。それが今の俺だった。
 カイジがわからなかったのも仕方がない。なるほどこんなの俺じゃない。
 生きてるってことは、あんたは金を受け取れたのか。
 それにしちゃ小汚い格好のままだったな。
 あれからどうしてた。
 あのコンビニはまだあるのか。
 話したいことは山のようにある気がしたが、通り過ぎたあんたの背中を追えるほど、オレはもうガキじゃないし、あんたは俺の顔を一瞥すらしなかった。
 今も耳に残る、あんたが背中からオレを呼ぶ声。ひょっとしたらあの時、オレとあんたの心は繋がっていたんじゃないかって、そんな風に信じてみたかった。
 だけどそんな夢物語は多分オレのためにはならないな。
 窮屈なネクタイを締めた今のオレにできるのは、あの夜を忘れて社会の歯車になること。
 孤独だよ。今も孤独だ。
 ひょっとしたら孤独じゃなかったのはあのふざけた鉄骨の上で過ごした数分、数秒だけのことだったかもしれない。だけど、こんなオレにも孤独じゃなくなった一瞬があったんだ。
 なぁ、カイジ。

 あの夜、オレは死にはしなかったけど、結局死んだのかもしれない。
 死んだんだな、きっとそうだ。
 あの夜までの俺は死んで、つまらない大人が一匹出来上がりました、オメデトウ。
 おめでとうおめでとう、これであなたも立派な社会の一員です。
 反吐が出るような毎日を、ただただ毎日神経すり減らして、こんなはずじゃなかったと歯ぎしりしながら生きるんです。生きるっていうのはそう言うことなんだろ、利根川先生。
 オレはこの後の人生も立派に生きながら死んでいきます、おめでとう。

 あの頃のオレは今もあの時のまま、あの鉄骨の上で立ち尽くしている。
 たぶん、どこにも行かれないまんま。
 なぁカイジ。あの夜のお前は孤独だったか?
 今もお前は孤独でいるか?
 なぁカイジ。
作品名:スターサイドロマンス 作家名:千夏