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東方『神身伝』

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カツン、カツン、カツン、カツン。

綺麗に掃除されたタイル張りの広い廊下を、二つの影が歩く。
一人は女性で、ふくよかな胸の谷間が大胆に見えるセクシーな紺色の和服を着ていて、紅色の髪をぽっちりの付いたゴムで、小さなツインテールにしてる。 
しかし、それよりも目を引くのは、彼女が手に持つ大きな鎌だ。 
まるで『死神』を思わせる大きな鎌を、和服姿の女性は違和感なく持っている。 
もう一人は男性で、こちらは至ってシンプルな黒いスーツ姿の男性だ。
だが、手には難しい漢字の書かれた見慣れない尺が握られていて、妙にそれが浮いて見える。
男は女性の後を歩いていて、どこかに案内してもらっているようだ

「悪いねぇ小町ちゃん、休憩中だったんだろう?」

男は低く太い声で、申し訳なさそうに前を歩く女性に声を掛ける。

「いやいや、気にしないで下さい。
あたいの休憩はこの程度の時間で無くなりませんから。」

小町と呼ばれた女性は、首だけ後ろに向けて満面の笑みで答える。 

コツン

「いて!」

そんな彼女の頭を何かがこついた。

「私は、貴方にそこまでの休憩時間を与えた覚えは有りませんが?」

小町が顔の筋肉を引く尽かせ、恐る恐る声のする方向に視線をむける。
そこには小町より一回り小さな、青い髪の少女が立っていた。

「え、映姫様、どうしてこちらへ。」

「私が私の客人を迎えに来るのに理由が必要ですか?」

映姫と呼ばれたその少女の手には、男の持つ物と同じ尺が有り、小町に怪訝な眼差しを向けながらそれで口元を隠している。

「そんな事より………貴女わ……またさぼっていたのですね。」

映姫は絵に書いたような綺麗で『真っ黒』な笑顔を小町に向ける。

「いやぁ〜あのぉ〜ですね。」

「問答無用です。だいたい貴女は。」

「はいはいはい、映姫ちゃん今日はそこまでな。私を迎えに来てくれたんだろ?」

小町への説教が始まった瞬間に男が間に入り、それを強制的に止めに入る。

「し、しかし。」

「今回は、私の顔を立ててくれ。」

男は、これ以上無い爽やかかな笑顔を浮かべて言う。

「あ、貴男がそう言うのなら、仕方がありません。」

映姫は、不完全燃焼全開の不満な顔で渋々男に従う。

「だってさ小町ちゃん。
ありがとう、後は映姫ちゃんに案内してもらうから。」

「は、はい。あ、ありがとうございました。」

小町は、深々と頭を下げると、逃げるようにその場から去っていった。
男は映姫に案内されて、とある一室に入る。

そこは広いとは言えないが、綺麗に掃除され、可愛らしいアンティークなデザインの家具が多数置かれた、女性らしい一室だ。

「ん〜、何時来ても良い部屋だと感心するよ。」

「いえいえ、そんな事は。
珈琲でよろしかったですね。」

「んあ、ああ〜有難う。」

映姫はそう言うと、カウンターキッチンで珈琲を淹れる。
二人は部屋の中心に有る丸く可愛らしいテーブルの椅子に腰掛けて。
早速、珈琲の香りを味わいながらそれを口に運ぶ。

「ん〜、いい香りだ。」

「先日、知り合いからいい物を頂いたので。」

「紫ちゃんかな?」

「あら、知っていましたか?」

「ああ、彼女は何かと目立つからね。」

「全く、恥ずかしい限りです。」

他愛の無い会話の中でも、双方共に実に気品に溢れたものを想わせる。
暫く、そのような他愛の無い会話を続けていたが、男がその和やかな空気を断ち切る。

「さてと、そろそろ本題に入らせてもらおうかな。」

男のその言葉一つで、一気に空気が変わり緊張が走る。
普通ならその場にいたく無くなる様な、重たい空気なのだが、映姫はいたって平然と男に視線を向けている。

「イレギュラーがこちらに来たようなのだ。」

「イレギュラーですか・・・・・。」

映姫は確認するように、その言葉を繰り返して言う。

「ああ、そちらの者がこちらに来た可能性は?」

「今の所、報告は受けていませんが、直ぐに確認できます。
さてと、盗み聞きの癖は未だに直っていないようですね、紫。
今回は大目に見ますから出てきなさい。」

映姫の発言の直後に部屋の壁に黒い隙間が現れる。
中は、無数の目がギロギロとあちらこちらを見ていて正直に気持ち悪い。
その中から、紫色の服を着た長いブロンドヘアーの綺麗な女性が現れた。

「申し訳ありません、現世の閻魔様が来るという事で、どうしても気になってしまいまして。」

彼女は映姫に深々と頭を下げて謝罪する。

「それはもういいです。っで、話は聞いていたのでしょう?どうなのですか?」

「はい、ここ最近は結界も安定していますし、こちらからもそちらからも侵入したと言う可能性は有りませんわ。」

紫は映姫の目を見つめてハッキリと言い切る。

「・・・・・・・・・本当のようですね。」

そして、暫く紫の瞳を見つめていた映姫が、ぼそりと呟いた。

「うむ、映姫ちゃんが言うなら本当なのだろうな・・・・・・・。しかし、それならなおさら問題だな。」

現世の閻魔は更に深刻な表情になり、顎に手を当て考え込む。

「そうですね・・・・・・なら、一度こちらで、そのイレギュラーを預かり様子を見ましょう。
もともと、こちらは『そういう世界』ですし、何かしら判断を下すのもそれからでも遅くない筈です。」

映姫の提案に、暫く考えていた閻魔だったが。
大きなため息を付いて、それを了承した。

「私の答えを出す程度の能力が出した答えだ、それで行こう。」

映姫は、それを確認すると早速紫に命令を出す。

「では、頼みますね。」

「分かりました、目標は。」

「うむ、水上冬馬と呼ばれる青年だ。」

「解りました、では早速行って参りますわ。」

紫は何も無い空間に指を突き出し、その指で上から下にゆっくりと下ろす、すると隙間が現れその中へと消えていく。

「紫、他の者には決して見られてはいけませんからね。」

隙間が消える前に映姫はそれだけ告げる、紫は隙間の中から「解っていますわ。」と返事をすると今度こそ隙間の中に消え、それと同時に隙間自体も消えてしまった。


作品名:東方『神身伝』 作家名:お⑨