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第二部13(86)カーニバルの剣

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「おい!その剣、気をつけろよ。刃物だからな」

剣を鞘から払い確認していた生徒に、上級生の小道具係が注意する。

「え?剣、見つかったんですか?」

そのやり取りを傍で見ていたイザークがその小道具係に問いただす。

「去年からここに保管してあるよ」

おかしなこと言うとでもいうようにそう答えた上級生に、

「え…。だって。あの…。じゃあ校長先生が預かっておられるのは…?」

イザークが尚も食い下がる。

「は?何を?しっかりしてくれよ。僕たちが作った作り物の剣は行方不明になったままさ。こっちはあの時のもの。ホラ、見ろよ。刃の部分に薄っすら血錆が出てるだろ?」

上級生が再び、鞘から剣を抜いてイザークに刀身を示す。

ユリウスの腕を掠めた刃の部分にはうっすらと血錆が浮き、曇りが現れていた。

「本当だ…。じゃあ…あの剣は…」

「何?どうしたんだい?」

「あ、ダーヴィト。いや、こいつがね。この剣とすり替えられた…あの作り物の剣が、校長室にあるっていうんだよ。大体、なんでそんなものを校長先生が持ってる必要があるんだって話だよなぁ」

変な事を言うだろう?というように肩を竦めてダーヴィトに目配せして見せると、その小道具係の生徒は剣を布でくるみ、二人の元を去っていった。

「おかしいな…。じゃあ…なんであれが…」

イザークは未だ納得いかぬという風にブツブツと言いながら考え込んでいる。

「イザーク。校長先生の部屋で…あの時すり替えられた作り物の方の剣を見たって、本当?」

「ああ。こないださ、廊下をブラックスがウロウロしていたから校長室へ送り届けてあげたんだ。校長室に先生はいらっしゃらなかった。だから僕はブラックスを部屋へ置いて失礼しようとしたら…」
― ブラックスのやつ、校長室のサイドテーブルをひっくり返しちまったんだ。それで、テーブルから転がり落ちた煙草入れの蓋を追いかけて行ったら、戸棚の下に入ってしまっていて。その戸棚のドアを開けたら、中にあの時の剣が入っていたんだ。僕はてっきり危ないからあのときユリウスを刺した本物の方の剣を校長先生が預かっておられたのだとその時は納得したのだけど・・・・。ねえ、ダーヴィト。今見た剣が本物だとしたら…あの元の作り物の剣が、なぜ校長先生のところにあるのだろう?

「さあ…何故、だろうな…」

ダーヴィトの背中を、冷たい指が撫でていくような旋律が走った。