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消えないもの

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眠らない新宿の街のとあるマンションの一部屋。
モノトーンの家具が置かれた質素な寝室のベッドに座り頭を抱えていた。

『・・・臨也』
そう聞こえたような気がして、臨也は身体をビクリと震わせる。
そろそろと辺りを見回すが、外から聞こえる雑踏の音以外しない部屋。
臨也以外いるはずがないのだから、辺りを見回しても誰も見つかるわけがない。
「・・・空・・・耳か。」
ポツリとそうこぼす。
そして、ベッドに倒れこむとその身体を丸めた。
まるで母親のお腹にいる胎児のようにその身を縮める。
『臨也・・・』
そう聞こえたと同時に、何かに身体を抱きしめられる感覚がした。
それに更に身体を縮める。
嫌々をするかのように頭を横に振りながら、誰もいるはずもない部屋を凝視する。
いくら凝視したところで、名前を呼ぶ相手がいるわけではない。
臨也は凝視していた眼をそっと閉じる。
不意に自分の唇に触れられたような感覚がして眼を開ける。
感覚がしただけ・・・、それなのに臨也の身体は熱を持ち始める。
「なんで・・・こんな・・・。」
どんなに呟いても、頭が混乱していても、ふと気を抜くと名前を呼ぶ声が聞こえ、身体を抱きしめられる感覚がする。
「からかうつもりで誘ったのに・・・。
 静ちゃんが・・・俺を優しく抱くから・・・。」
そう呟いて臨也は仰向けにベッドの上で転がる。
そして、そっと眼を閉じると、天井に向かって腕を伸ばす。
「からかうつもりが・・・、なんか、苦しいなぁ。」
臨也はそう言って、天を仰いだ。



池袋の雑踏も聞こえない住宅街。
静まり返ったアパートで、平和島静雄は床に寝転んでいた。
『静ちゃん・・・』
そう聞こえたような気がして頭を横に振る。
「空耳なんて、ノミ蟲の野郎・・・。
 相変わらずうぜぇ。」
居ない筈の相手に悪態をつく。
そして、火がついた煙草を吸いながら、自分の手を眺める。
眺めながら、その手に残る感触を掴むかのように強く手を握る。
その握った拳で、今だ感覚が残る自分の唇をぬぐう。
『静ちゃん・・・』
また名前を呼ばれたような気がして、眼を閉じ、頭を横に振る。
閉じた眼に映ったのは、何時もの何か企んでいるかのような臨也の顔ではなく、自分の眼下で蕩けたよな顔をして喘ぐ臨也の顔。
「くそっ!!」
握っていた手を、真横にあったテーブルに叩きつける。
ばきっという派手な音と共に、テーブルの角が割れ、破片が床に散らばった。
静雄はそんなことお構いなしに、更に拳を強く握る。
「からかう為に誘ってきたのは分かってたっつーのに。
 ああ、もぉ、ほんとあのノミ蟲うぜぇし、なんかいてぇ。」
そう呟いて、静雄はまた手を眺める。


お互いの声が、体温が、口付けが離れない。
それがどういう意味なのか、二人はわからない。

そんな二人が自分の気持ちに気づくのにそんなにかからない。

お互いの気持ちが分かっても、きっと二人は喧嘩をする。
それだけが二人を繋ぎとめていると分かっているから。


二人が恋人となって愛し合うまで、後−−−−−。




END
作品名:消えないもの 作家名:狐崎 樹音