第二部18(91) 逮捕
アーレンスマイヤ家に、警察の人間が訪ねて来た。
「はい。ゲルトルート・プランクは当家の使用人ですが…」
エントランスで執事が対応する。
「悪いけど、彼女を呼んできてもらえないかね?」
「一体…彼女が…何を?」
狼狽を隠せない執事に、
「殺人の…重要参考人として署に同行願いたい。…当家のマリア・バルバラ嬢の服用薬が先日警察に持ち込まれた。…その薬から毒物が検出された」
「…ゲルトルートを連れてまいりました」
不安に顔を曇らせた女中頭がゲルトルートを連れてエントランスにやって来た。
「ゲルトルート・プランク。殺人の重要参考人として、警察へ同行願いたい」
「え?」
驚きに声も出ないゲルトルートの腕を掴むと、警察の人間は半ば強引にゲルトルートを引っ張って、館を出て行こうとした。
「な、何のことでしょうか?私が…殺人?…一体誰の?」
「マリア・バルバラ・フォン・アーレンスマイヤのだ。お前が看病していた主の服用していた薬から毒物が検出された」
「知りません。私は、そんな事をしていません!」
「続きは署でゆっくりと聞く。…来い!」
「いや、私はやってません!お願いです。信じて!!」
警察に腕を強引に引っ張られながら、無実を訴えるゲルトルートの叫び声が屋敷の高い天井に響きわたる。
警察がゲルトルートを連れて去っていった後、エントランスには騒然とした使用人たちと、茫然とその一部始終を見ている事しか出来なかった執事が残された。
作品名:第二部18(91) 逮捕 作家名:orangelatte