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はろ☆どき
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Hot&Sweet Mustard【C93 新刊】

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※一部抜粋


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 しゅんしゅんと湯の沸く音、トントンと包丁がまな板に当たる音が意識の奥で響いている。だがまだ目蓋は重く、持ち上げようとしてはあえなく落ちる。
 やがてジュジューッとベーコンが焼ける匂いと焼き立てパンの匂いが漂ってきて鼻を擽り、すうと息を吸い込めばぐうとお腹が音を立てて――目が覚めた。
「あれ……もう朝?」
 くわっと欠伸を一つすると、眠い目を擦りながら寝室から出て美味そうな音と匂いを辿る。寝巻きがわりにと大人から借りた綿のシャツを羽織ったまま、ぽてぽてと廊下を進めば広くて明るい居間に着いた。
「まぶし……」
 色素の薄い金眼に朝陽が染みる。
「おはよう、鋼の。よく眠れたかね」
エドワードが起きてきたことに気づいたロイが、台所のカウンターから声をかけてきた。
「はよ。てか、いつ寝落ちたのか記憶がねえ……」
「そうだな、日付を越えるよりは前だったかな」
「まじかよ……。やっぱ、あの体勢は寝ちまうって。せめてここのソファーで読ませてくれよ」
「そう言うが、初めての時も二度目の時も早々にソファーやらラグの上で寝てしまったじゃないか。それで私がベッドへ運んだら、寝ているうちに勝手をするなと怒ったのは君だろう?」
「だからって、最初からベッドで毛布に包まってぬくぬく状態じゃなくてもさ……」
 確かに初めて大佐の家に泊まった日――泊ったと言っても変な意味じゃない。大佐の持ってる文献を読ませてくれるというので訪ねただけだ――飯食った後に本を読んでたら眠りこけてそのまま朝になっていた。それだけの話だ。
「だからって、大佐と一緒のベッドじゃなくても……!」
 そう、問題は眠りこけたオレを大佐が抱えて運び、あろうことか大佐の寝室のベッドに放り込んだことだ。
 目が覚めたら見覚えのない部屋で、見覚えのありすぎる(しかも普段敬遠している)男の顔が間近にあった時の心境を察して欲しい。おかげで、朝っぱらから本気で悲鳴をあげてしまったではないか。
「何度も言うが、うちにはベッドが一つしかないんだ。セミダブルだから広いし、君一人くらい添い寝しても充分……」
「だーかーら! そういう問題じゃねえと何度言ったら……。ソファーだってでかいんだし、充分寝られるじゃん」
「君をソファーで寝かせて万一風邪でもひいたら、アルフォンスや中尉になんと言われるか……。実際、前回はソファーから転げて床の上で寝ていたしな。かと言って私がソファーで寝ようとしたらそれも駄目だと言うし、だったら共にベッドで寝るしかないだろう?」
「あーもう!」
 何度やり取りしても平行線を辿る会話に、オレは寝起きのボサボサ頭を掻き毟り地団駄を踏みたくなった。
「そんなことより顔を洗ってさっぱりしてきたらどうだ。今、朝食を準備しているから」
「……そーする」


【BLTサンドウィッチ】~手作り編~より