トド松のデリバリーコント~本当は怖い赤ずきん~
悪い狼が来て頭からバリバリと食べられてしまうからね。
それは小さい頃から言われている話で本当か嘘かは分からない。
悪い子は森の奥に置いていかれるなんて話もあったくらいだから本当かもしれないが、いわゆる大人が子どもに聞かせる教訓話のようなものだからそんなことはどうでもいいのかもしれない。
赤い頭巾を被った彼にもそれは例外ではなく、それはもう、耳にタコが出来るほど言われていたことだった。
ある日の事。村に飢饉が続き、1人、また1人と村人が亡くなっていったり病気を患ってしまった。
そんな中、彼は母親に森の奥に住んでいる祖母の見舞いにいくように促された。それはいわゆる口減らしというものだった。
しかし、彼は数時間後に無傷で帰って来た。驚く母親に彼は静かに話始めた。
「………母さん。僕、知ってるよ。母さんは僕を殺したかったんだよね。だって、もう食べるものも無いし、何も出来ない僕は邪魔だもんね………お婆ちゃんの時もそうだったもん。だって、あんな森の奥に老人が1人で生きていくなんて不可能だよね。
僕ね、森の中で狼に会ったんだ。それでね、頭からバリバリ食べられちゃった………ねぇ、見て、僕…母さんのせいでこんなふうになっちゃった………」
彼が被っていた頭巾をそっと脱ぐと顔は大きく腫れ上がり片目はむき出しになっていた。
「ねェ………母さん、ぼグ……スッゴク………いダ、ガッタ…よォ?」
森の中に人を捨てたらいけないよ。狼に食べられた少年に頭からバリバリと食べられてしまうからね。
「………っていうのどう?」
そう言ってトド松は5人の兄の前で笑った。
それを聞いていた兄たちは口を揃えて叫んだ。
「いや、怖ぇよ!!!!!」
作品名:トド松のデリバリーコント~本当は怖い赤ずきん~ 作家名:桜菟