SBBMって?
「アムロ! 今夜はSBBMだっ!!」
人型になって洋服を着用しようとしたばかりの俺を突き倒しかねない勢いで扉を開けてきたシャアは、喜色満面な表情でいきなり意味不明の言葉を発した。
「はっ??」
トランクスの片方に足を突っ込んだまま、ほぼ全裸の状態で俺は動作を停止した。その俺をシャアはギュウッと抱きしめるとそのまま抱き上げてくるくると回り始めた。おかげで引っ掛けたにすぎないトランクスは部屋の隅っこへと遠心力で飛んで行ってしまった。
「SBBM! スーパーブルーブラッドムーン!! 略してSBBMだよっ!!」
「??何?それ」
「ニュースで言っていたんだ。今夜は月が地球に近いスーパームーンに、月2回目の満月のブルームーンで皆既月食によって生じるブラッドムーンと三つの現象が重なった非常に珍しい夜なんだと!」
「で? 貴方は興奮してるってわけか〜」
「この冬の季節に珍しい天体ショーを君と共に見れるだなんて、興奮しないでいられるわけがないだろう?!」
「それで貴方はアザラシの毛皮の防寒グッズを買い込んできたってわけかい?」
「ほぉ〜。流石に君の嗅覚は侮れないな。そうだよ。完全防寒で天体ショーをくっついて鑑賞したいんだ」
駄目かなぁ? と言わんばかりの表情で瞳を覗き込まれたら、俺は否やを言えない事を十分に理解した上でのシャアの行動に、呆れ半分楽しみ半分で俺は彼の首に両腕を回した。
「一先ず、洋服を着用させてもらっていいかなぁ。このままじゃ、いくら防寒の完璧グッズを使用しても当たる所が冷たいんだけど・・」
そう言ってみると、シャアは大慌てで俺の体を床に下すなり、チェストから洋服一式を引き出してバッサバサと着せかけてきた。
「今夜の月食は、完全に隠れた状態が長いんだ。しっかりと着込んで楽しもう。ああ! そうだ!! 温かい飲み物もポットに準備して! そうだ!! アルコールも必要だな」
まるで子供の様に興奮するシャアの姿に、俺は爆笑を抑える事が出来なかった。
月が人体に及ぼす影響をより強く受ける俺たちの様な血族の体質。
シャアが同じ体質を顕著にしている事がこんなに楽しく嬉しい事だなんて、今まで感じた事は無かった。
今夜はSBBMをシャアと一緒に心行くまで満喫しようと、俺は準備に右往左往しているシャアの許へと二本の足で駆け寄った。
2018.01.31