告白
彼をデートに誘う。さりげなく。そう、さりげなぁく。そして彼が大好きなものがたくさんある場所へ行く。そう、猫カフェだ。きっと猫と戯れる一松は天使のように愛らしいんだろうな。そしてその後におの丘で告白だ。何でもあの丘で愛する者に愛を叫べば永遠に結ばれるという。どうだ?完璧だろう?
そう脳内劇場に酔っていると愛らしい声がした。
「………おいクソ松。猫カフェ行くんだろ?あくしろよ。」
そう言って俺の想い人は俺の頬に三本の切り傷を作った。
痛いがこれもきっといつもの照れ隠しだろう。
俺は肩をくすめながら大股で歩く彼のあとを追い、彼の横で笑顔を作った。すると彼ははぁ、とひとつため息をついた。
「ね、ねこ………」
猫カフェについた彼は目を輝かせながらそっと猫を撫で始めた。
やはり可愛い。と思いながら彼を見ていると一瞬彼と目が合った。しかし彼はすぐに猫の方を向いてしまう。彼に撫でられて幸せそうにしている猫に小さな嫉妬心を抱きながら俺も近くの猫に手をのばした。灰色の猫は俺に撫でられても素知らぬ顔をして丸くなる。まるで「ご自由にどうぞ。自分は動かないので」とでも言いたげな様子に想い人と似た姿を浮かべ静かににやけるのだった。
そして運命のときはやってきた。先ほど花屋でこっそり買った薔薇の花を後ろに忍ばせ丘へ向かう。頂上のベンチに座ると町全体を見渡すことが出来る。
ぼんやりとそれを見る彼の横顔がまた可愛らしくてずっと見ていたかったが、一松。と彼の名を呼ぶと彼はそのままこちらを向いた。
「一松。お前が好きだ。愛している!!いきなりで驚くだろうし血の繋がった実の弟にこのようなことを思うのは非常識かもしれない。しかし俺はお前の優しい所も照れ屋な所も本当は1番常識があって繊細な所も寂しがり屋な所も………お前の全てが愛おしくて仕方がない。俺の気持ちを受入れてくれないか?」
彼は数秒瞬きをした後火をつけたように赤くなった。
「な、ななな、何言ってんだクソ松!!こんなゴミをすきとか何考えてんだよ!!バッカじゃねぇのか!?ふざっ………ふざけっ………」
そうやって叫ぶ彼の目からは大粒の涙が流れていた。そんなに嫌だったのか?と慌てて聞くと「………実の兄弟好きになるのは俺だけで充分なのに………俺だって……お前が好きで………それを我慢しようとしてたのに………ふざけんな………」と呟いた。
それは、つまり………
「お前も………俺を………?」
絞り出したように口を出た言葉に彼は小さくうなづいた。
一松が、俺を………
確信した瞬間はただただ嬉しい気持ちしかなかった。思いのまま彼を抱きしめ、やったーと叫んだ。愛している。大切にするとも叫んだかもしれない。
「………マミー、ダディー、そういうことだ。」
そのまま帰宅し互いに愛し合おうと家でやらかそうとすると母親がうるさいと言って入って来たのだ。
母の眼光がチクチクと針を刺したような鈍い痛みに変わって行く。
彼女はゆっくりと口を開くと「あら、私たちと同じ経緯で告白したのねカラ松。」と笑っていた。
「え?母さん、オレらホモだよ!?しかも実の兄弟で。」
「あら、別にいいわよあなた達がどんな性癖でもどんな人が好きでも」
…………母は強いということだろうか………?
まぁ、そんなことは置いといて俺らは結ばれた。ハッピーエンドだ。なんてったってこれからは愛する人とずっといられるのだから。