Lovin’you UC0093
UC0093年
シャア・アズナブル率いるネオ・ジオンは地球連邦軍に宣戦布告し、小惑星5thルナを連邦政府の拠点であるラサへと落とし、多くの罪のない人々を死に至らしめた。
そして次に、アクシズを地球に落とすという暴挙に出た。
その目的は、地球を寒冷化させてスペースノイドを弾圧する地球連邦政府を粛清する事。そして、地球に残る人類を全て宇宙へ上げる事だった。
5thルナの落下を阻止できなかったロンド・ベル モビルスーツ隊隊長 アムロ・レイは、窓から見える地球を見つめ、悔しさに唇を噛み締める。
「クソっ!情けない!」
壁に拳を叩きつけるアムロを、ブライトが宥める。
「アムロ!あんまり自分を責めるな!」
「だけどブライト!私の力が足りなかったばっかりに多くの人々が死んだんだ!」
「アムロ!」
「あの人がこんな事をするなんて!」
壁に身体を預け、アムロはズルズルと床に座り込む。
「私の所為だ…、私があの人を…」
「アムロ!」
「だってそうだろう?私があの時、あの人の手を振り払ったりしなければ!一緒に宇宙に上がっていたらこんな事にはならなかったかもしれない!私が…」
アムロは溢れる涙を堪えるように唇を噛み締め、前髪を鷲掴む。
「あの時のお前の状況を考えたら仕方がないだろう!誰もお前を責めたりしない!」
「…ブライト…。でも…やっぱり私の所為だ。それに…あの人はまだ何かやる気だ。何かもっと恐ろしい事を考えている…次こそは必ず止める!この命に代えても、必ず阻止してみせる!」
それだけ言うと、アムロはその場を後にしてドックへと向かった。
「アムロ!」
ブライトはその後ろ姿を、ただ見送ることしか出来なかった。
「アムロ…」
アムロの言う通り、シャアは更なる作戦を決行した。
アクシズを地球に落とし、地球を氷の惑星にすると言う恐ろしい作戦を…。
そして、アムロは本当に命を懸けてそれを阻止した。
地球を守る為…何より、シャアにこれ以上罪を犯させない為…。
アムロは誰よりもシャア愛していた。だからこそ、彼にこれ以上の罪を背負わせたく無かったのだろう…。
UC0093年3月12日、それはブライトにとって、とても長い一日だった。
艦長として作戦を成功させる事を優先しつつ、捕虜となったアムロとジュドーの身を案じながら戦況を見守っていた。
そして、アムロとシャアのモビルスーツでの一騎打ちを切ない思いで見つめていた。
互いに求め合い、愛し合っているのに、運命の歯車が少しずれてしまった為に、二人は命を懸けて戦う。
類まれなカリスマ性と実力を持つ男と、ニュータイプという能力を持ち、おそらく誰よりも勝る腕を持つパイロットの女。
二人が手をとりあえば、きっと人類はもっと進化していける。かつてジオン・ズム・ダイクンが求めた未来を切り開く事が出来るだろうに…。
ブライトはやりきれない想いを抱きながらも、二人の戦いを見守り続けた。
そして、地球に落下を始めたアクシズを包み込んだ緑色の光。
二人があの光の中心にいると知った時、二人は死んでしまうと思った。
幼い子供たちを遺し…人類全ての業を引き受け…互いの命を道ずれに…死んでしまうだろうと…。
二人はこういう形でしか終われなかったのかと…ただ…悲しかった。
しかし、神は二人を見捨てなかった。
奇跡的に助かった二人を見た時は、生まれて初めて神に感謝した。
ようやく分かり合えた二人が寄り添う姿に涙が流れた。
その後も色々とあったが、今、二人は互いに支え合い、人類の未来のために歩き出している。
ずっと二人をそばで見てきたブライトにとって、それは奇跡のようであり…本当のあるべき姿なのだとも思う。
二人の笑顔を見つめ、ブライトは微笑む。
この先も、二人が幸せであって欲しいと…心から神に祈りながら…。
end
一日遅れですが、逆襲のシャア30周年のこの日に、Lovin’you のラストをブライト視線で振り返ってみました。
koyuho
2018.3.13
作品名:Lovin’you UC0093 作家名:koyuho