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ポリジョイ
ポリジョイ
novelistID. 64603
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縄文

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ここは三年一組の教室、いつもなら小鉄たちと騒がしくしている少女が机に伏せている。
 
「のり子―。いったい今日はどうしちゃったの、マスクと帽子なんかしちゃって!今は八月なのよ。」

あかねが訊ねてものり子は首を振るだけだ。
業を煮やしたあかねがのり子の重装備を解くと、そこには、一面落書きだらけの、今にも泣きだしそうな顔があった。
 
「おとんが昨日酔っぱらって寝てるウチにマジックで書きよったんや・・・朝一生懸命洗ってきたんやけど全然落ちへんねん。
こんなんあのサルに見られたら笑われるーー!」



よく見ると、<阪神最高!!>とあるので、昨夜の勝利に気をよくして書いたのだろう。
いくら喜ばしくても、娘の顔に落書きとはどういう神経なのだろうか。
とはいっても、のり子の父は、タクシーの運転手で客欲しさのために順番待ちのタクシーを押し出すぐらい平気でするので、これぐらい何とも思ってだろう。
 
「何だよ、のり子。その顔、いつもより変じゃねぇか。」
「うるさい!見るな、ボケェ!!」

一番見られたくない小鉄に見られてしまった。
そのことで、つい声が大きくなってしまい、クラス中の注目を集め皆に顔を披露することになったのり子。
恥ずかしさから泣き出してしまった。

「はい、皆!もうすぐ春巻先生が来るから、席に着く!」

さすが担任代行をするだけあってか、生徒たちが席に着く。

「帰りにアタシの家でママの美容品使って落とそう。ね?」

そのことで安心したのか、のり子も泣き止んだ。



放課後、あかねの家こと『コーポあかね』の一室で作業は行われていた。
 
「うーーん。クレンジングでもダメかぁ。」

なかなか消えないことにのり子の父を恨みながら辺りを見渡すと、よさげなクリームがあった。
 
「これなんかいいんじゃない?」
「ごめんな、あかね。手間とらせてもうて。」

早速塗っていくと、鼻をさす独特の香りがした。
海外製だからだろうか。
説明書きは、英語で書いているので、全ては分からないが『リムーブ』という単語があったので、大丈夫だろう。

 

五分後。ティッシュでクリームを取り除いていくと、マジックはまだ取れていなかった。
 
「これもダメだ。」

そう呟きながら目のあたりを拭き取ると、黒いものがついてきた。
何だこれ、と思ってのり子を見ると有るはずの物が無くなっていた。

ヤバいとは思ったが、時すでに遅しのり子の顔からはキレイさっぱり眉毛がなくなっていたとさ。

めでたし、めでたし。



「ごめん!のり子―――!」
作品名:縄文 作家名:ポリジョイ