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代打の代打
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はじまりのあの日8 加わる仲間・深める縁(えにし)

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お人形店のコマーシャル。この会社のCMは年間通して流れている。今回はひな人形のCM。ひな祭りか。おひな様も、五月人形も。彼が来てから、飾るようになったんだよね。わたしと片割れの、健やかな成長を祈ってと。そんな、優しい彼の心配り(こころくばり)枝豆を茹でながら、意識があの日へ降りてゆく。今日は作業しながら、思い出が怒濤のように溢れるな―

「忙しくたって、年中行事、歓迎会。大事にしようじゃない」
「そういえば、神威君が来て、飾るようになったのよね。おひなさま」
「はじめは、マンションのリビングだったよね、がっくん」
「それはシュ~ルですね、神威のに~さん」

神威の家の中。居間、茶の間、奥の間。普段は、木製の引き戸で仕切られている空間。今日は戸が外され、広い和風空間。そこに、ひな人形を飾りながら。紫の彼、めー姉、わたしと、IA姉の会話。わたしとレンの身長が、IA姉を超えたあの日

「でも、ひな祭りってトキメキますよね~」
「今日はぴこぴこ、みきみきとおひな様」
「あは、似合ってるよ~ピコきゅ~ん」

オッドアイ、綺麗な目を耀かせながら『電子世界の囁き声(でんしせかいのささやきごえ)』新人の歌手音ピコ(うたたねぴこ)くん、14歳。某動画サイトにて、フリフリのゴスロリドレスで『歌ってみた』ところ、弾幕が凄かった。良い意味の反響という証。その姿を見た女性プロデューサーが、声と容姿に惚れ込みスカウトしてきた。PVの撮影で、レン共々『男の娘』になっている。レンの場合は嫌々なのだけど、ピコくんは自らノリノリで『男の娘』になる。そこが、どうやらカル姉のお気に入り。本日も振り袖男の娘。カル姉Mikiちゃんと色違い、お揃い。上は普通の振り袖だけど、下は、フリルのスカートタイプに花柄ニーソ

「三人とも似合ってるよ、Mikiちゃん」
「ふふ~。ありがとう、リンちゃん」

こちらも新人さん。歌うアンドロイド『歌愛す機械人(うたあいすきかいびと)』そんな無茶振りのコンセプトを、真剣にこなす。本名、遊馬ミキ(あすまみき)のMikiちゃん16歳。やって来たその日に『Miki姉』と呼んだ。すると

「ちゃんって呼んでよ、リン先輩」

と返ってきた。先輩の響きは魅力的だったが、そんな呼び方をずっとされては堪らない。歳もわたしより上なので

「じゃあ、Mikiちゃんも『リンちゃん』で~」

そんなやり取りをした。ところでなぜ『アンドロイド』などというコンセプトなのか。無茶振りでは、と聞いたところ、神威のプロデューサー曰く

「オーディションの時のマジ顔が、なんかサイボーグを連想させてよ。先輩(パイセン)と、おもしれぇぞって」

とのこと。カイ兄と組んでデビューした。PV撮影では、一切表情を変えるなと言われ、かなりきつい思いをしたという。以来、歌うときは、ことさらに笑顔を心がけている。そのピコ君とMikiちゃん。出会ったその日に

「なんだか似てるね、うちら。電子とアンドロイド。かわい~ね、ピコ君のしっぽプラグ」
「そうですね、Mikiちゃん。ユニフォームの感じとか、アホ毛も似ています~」

そう言って意気投合。Mikiちゃん、ピコ君のプラグを自分のベルトバックルに繋いだりしていた。確かに、新しく来た二人。頭のアホ毛や、ユニフォームの感じが似ている。カル姉は、その二人と居るのが好きらしい。三人お揃いの格好でいることが多い

「Japanの心、ワビとサビ。大切でゴザルナ」

着流しの懐に右手を入れ、左手を顎に当てアル兄。ヘタな日本人よりも、よっぽどのジャパニーズ。ウムウムと頷く

「世界に広がるクールジャパンじゃない。めぐ、作っといた桜餅と菱餅も出しとこう」
「は~い、ぽ兄ちゃん。おひな様にお供えするのだよね。あ、皆にも作ってくれたよ~」
「おれも手伝うす~、グミサン。がくサンの桜餅と菱餅なら、間違いないっすね。超~食いて~」

立ち上がるめぐ姉に続く勇馬兄。お菓子への期待感、満々

「手間を掛ければ、旨くなる。愛情込めれば美味しくなる。歌も料理も一緒じゃない。勇馬、食った言うな。行くならついでに煮物盛り合わせとがんもどき、持って来てくれ」
「ウスっ、サーセン」

めぐ姉を追って走ってゆく。次々と指令を出す彼、おひな様を飾りながら

「リリ、カル。メイコ様に白酒(しろざけ)をお持ちしろ。あと、アテの大葉みそ、辛きゅうり、豆腐の燻製もいこうじゃない」
「あいよっ、甘酒もだすよっ。おにぃの手製っ。一緒にのも~ぜ、センセ」
「あら神威君、ありがとう。白酒も造ってくれたの~」
「いつもすみません、神威さん」

呑む気満々のめー姉。でも、彼と共に、おひな様を飾り付ける。キヨテル先生は、空いた箱などを片付けてくれる

「はは、メイコ『酒』造ったらダメじゃない。白酒は越後のお取り寄せ~。甘酒は作ったけどさ」
「禁止されていますからね、お酒造りは」

苦笑いの紫様と先生。めー姉『冗談よ』と返す。お酒に詳しいだけのことはある

「ミキミキには、おまんじゅう。ピコピコのに、お赤飯」
「え、おまんじゅうまで作ってくれたの、神威のアニキ」

リリ姉に続く、カル姉の『作った』に驚くMikiちゃん。確かに、おまんじゅうまで手製というのは珍しいかもしれない。わたし達には、普通のことなんだけどね、紫様のお手製和菓子

「お赤飯炊いてくれたんですか、かむさん」

驚くよりは、喜びの表情のピコ君

「ああMiki、ま、俺が作った田舎まんじゅうだけどな。好きだって言ってたじゃない。お前達の歓迎会なんだから、おもてなし~。中身は粒餡、抹茶風味~。ピコも熱烈歓迎~。お多福豆で贅沢仕様にしてあるぞ。好物なんだろ、二人も行ってもっといで~」
「わ~い、ありがとうございます~」
「ありがとで~す。神威のアニキすっご~い」

アホ毛が、わんちゃんの尻尾みたいに振れるMikiちゃん。二度跳ねて、嬉しそうに取りに向かうピコくん。仕草が完全に女の子。いや『男の娘』と言った方が良いんだろうか。アホ毛も元気に跳ねる

「誰か、カレイのあんかけ、温め直して取ってきて~。おいなりさん、ちらし寿司も出しちゃおうじゃない」
「がっくん、わたしが取りに行く~」

雛飾りに、だいたいのメドがつく。ご機嫌で向かうわたし。ひな祭りに併せて、新人二人の歓迎会を行なおうとは、めー姉の提案。料理は、カイ兄と紫様が心を込めて

「よし、オレも家(マンション)のモノ。とって来ようかな」

ひな人形の飾り付けから、離れようとするカイ兄。すると、今まで手伝っていた

「あ、おれやるよカイ兄」
「ワタシも手伝いますわ、レン君」
「ま~か~せ~てっカイ兄」

弟、ルカ姉、ミク姉が立ち上がる。飾り付けは、兄や彼の指導がないと出来ないテイタラク

「それじゃ、お願いしようかな。レン、ルカ、ミク」

マンションへ、三人が談笑しつつ、イソイソ向かう

「デハ拙者、卓の用意をするでゴザル」
「私はグラス類を用意いたしましょう、神威さん」
「頼もうじゃない、アル、テル」
「じゃ、もう此処(神威家)に、準備しちゃおうか、殿」

アル兄、キヨテル先生も声が弾む。見るからに楽しげな兄。紫の彼もノリノリで