妖夢の朧な夢日記-aoi
真実を理解したとして、心から吐き出すのは安堵
翌日になっても、友人は入ってこなかった
入ってきたとしても、何にも覚えていない
そもそもどこで食物を食べたのか、
そんなことさえも今は、ぐちゃぐちゃとした頭ではまとまらない
見た事のない情景だって頭の中で混じりあってきて、
嘔吐してしまいそうな位に頭痛がする
胃の中が空っぽだという事か
そういえば、昨日、ご飯を食べていない?
ここで食べた記憶がない?
記憶とした夢がない?
夢は幻想?
ここは幻想
幻想である私が見る幻想?
幻想が夢?
幻想が夢を見るのか?
そもそも私は幻想なのか?
答えは出ない
ぐるぐる回る自問自答
答えが出ない自問自答
問いだけが回り続け
問いだけで滞り続け
「あやややや」
……うん?
何か、声が、した?
「動いた。生きていたのね。起きて起きて」
そう急かされるままに、目を開ける
「おはようございます。清く正しい射命丸です……って、もう昼頃ですけど」
目の前で笑う、あの日隣で眠っていた彼女
友人の言う通り、ピンピンとしていた
立派に羽も広げ、パタパタさせている
やはり夢か
でも安心した
「おはようございます……何用ですか」
この通り、動けないままですが
と、発しながら寝返りを打つ
寝返りを打てなかった訳ではない
ただ、寝返りを打ったら落ちてしまいそうな、
そんな気がしただけだ
「貴女を迎えに来ました」
そんなことを背後で言うので、
うっかり誤解してしまうところだった
「私は出られません
白玉楼に戻ったところで、病を患っている私に
何ができると言うのでしょうか」
正当な理由をつけ、突飛な天狗の話を断った
が、しかし、彼女は下がろうとはしない
逆に迫ってきているのだ
「そうやって閉じ篭ってはいけませんよ。
空は広い。あんなにも高く、美しいというのに、自らの意思で塞ぎこんでしまっては勿体ない。
そうですよ、折角の晴れ模様も台無しです」
そんなに動いていないと、筋力も低下しているでしょう。
私が運ばなくてはいけませんね。
そう言って、彼女は私を抱き上げた
「貴女、後で怒られるんじゃ……」
唯一の不安を吐き出した
が、彼女は微笑むだけである
「大丈夫、大丈夫です。久々に空を飛んでほしいだなんて思っただけですから。
永遠亭側もそれを望んでいるでしょうし、問題はまったくないのです」
宙に浮く感覚
縁側に出た彼女は、地面を蹴って空高く舞った
山頂近くまで、猛スピードで飛んでいく
高く昇った日
澄み渡る青い空
「綺麗、でしょう?」
そう言って彼女は笑った
作品名:妖夢の朧な夢日記-aoi 作家名:桜坂夢乃