妹萌え。
表が騒がしい気がして、眠い目を擦りながらテラスに出た。
女の子が二人、スイスの家の庭で遊んでいる。
あぁ、朝から何か良いもの見たな、
金髪と黒髪の女の子が、可愛らしく笑いあっていた。
「おはよ〜ドイツ〜何してんの〜・・・
あ、女の子じゃ〜ん可愛い〜vv
てゆーかリヒテンシュタインと台湾?」
俺が隣にいないことに気づいたのか、イタリアが後ろから抱きついてきた。
またそんな格好で、向こうから見つかったらどうするんだ、
俺のシャツを羽織っただけの、あられもない格好。
「そう言えば・・・向こうでスイスと日本が話してるな。どういう関係だ?」
「え〜?リヒテンシュタインとスイスは判るでしょ?日本と台湾も同じだよぉ。」
スイスと、リヒテンシュタイン・・・日本と台湾。
どう考えればこの人種も生活環境も違う二人をイコールに出来るんだ?
しばらく考えていると、
イタリアが痺れを切らしたように俺の前に出て話し出した。
「も〜っ何で判んないのかなぁ!?
スイスとリヒテンシュタインだよ?兄妹だよ、兄と妹!日本と台湾も同じ!」
「・・・あぁ、そうか。
しかし判る訳がないだろう、俺に女の家族はいない、兄さんしかいない」
「え〜・・・ハンガリーさんはどうなるのさ〜・・・」
怒られてしまったのだろうか。
そんなイタリアも可愛いと思う俺は重症だ。
イタリアは本当に、ころころとよく表情が変わる。
俺を見上げて、眉根を寄せて抗議されてしまった。
「あいつとオーストリアはただの同居人だ」
「ずっと一緒にいるんだから、それは家族って言えない?・・・俺もさ。」
「何だ、そう言って欲しかったのか?
そうだな・・・限りなく家族に近い他人、
イタリアの場合は恋人、という定義付けでどうだ?」
イタリアはまだ不満そうだったが、それで納得することにしたらしい。
抱きついてきた、俺を見上げる顔が可愛くて、抱き返す。
キスをしようとして・・・
「ドイツさん!!ドイツさんちょっと!!
そこでイチャイチャしてないでこっちに来てください!!」
思いっきり、邪魔をされた。
普段は大人しくお互いに引きこもり経験があり大声など出さない二人が、
近所中に聞こえるような大声で、怒鳴りあっていた。
「あなたにはもう少し許容力が必要なんじゃないですかスイスさん!?」
日本とスイスが本気過ぎて、
イタリアが怯えきった表情で俺の腕を掴んでいるものだから、
女の子と遊んで来いと告げ離してやった。
「貴様こそ妥協を覚えるべきなのだ日本!!」
どういう議論が展開されているのか、今の流れでは把握できない。
何故俺は呼ばれたのか、
この怒鳴りあいのジャッジマンでもしろと言うことなのか?
ギャンギャンと言い合う二人の頭を押さえつけ、
俺は双方の意見を聞き直すことにした。
「まず、この議論は何のために開かれているのか。
何故これほど言い合うような内容なのか。
それを明確にしてくれ。
それから双方の意見を聞こう。」
一瞬スイスが銃口を、日本が刀を向けようとするところが見えたが、
得策でないことはこいつら自身が判っているので気にしないことにした。
「フン、議論と言えるほど高尚なものではない。」
「あちらに女の子が二人、いますよね。
一人は台湾。私の妹です。
可愛らしいでしょう?」
「一人は貴様も知っての通り、我が妹リヒテンシュタインだ。」
「どちらの妹が一番可愛いか。
それを話し合っていたのです」
・・・何てくだらない会話なんだ。
確かに、目線の先でイタリアと遊んでいるリヒテンシュタイン、台湾は可愛いが、
だから何だ。
どっちだって良いじゃないか。
「今どうでもいいとか思いましたねドイツさん!!
違います、これは国際問題に発展する重要な事項です!!」
「ま、まぁいい・・・話してくれ。
何故これほど言い合うような内容になった?」
俺の中での結論は決定してしまって、
俺はこの話が、今日本が言った通りどうでもよくなる。
しかし話を聞かない訳には、いかなそうだった。
「日本が我が妹を、自分の妹より可愛くないと抜かすのだ。全くふざけている」
「あなたこそ、世界一可愛いなんて言い過ぎなんじゃないですか?鼻で笑ってしまいますね」
日本がスイスを挑発した途端に、
「何だと貴様ぁ!!もう我慢ならん!!その頭撃ち抜いてくれる!!」
スイスが激昂して立ち上がり両手に銃を持ち出す。
「そんな鉛玉など!!この刀で微塵切りにしてくれますよ!!」
日本はその背丈ほどもありそうな刀を持ち出し間合いを詰めた。
俺の命が危ない。
「・・・なぁ、一言だけいいか?」
二人が無言で俺を睨み付けてくる、さしもの俺も怯んでしまうほどだった。
咳払いをして、災難な目に遭わないためにはどうすればいいのか考えてしまう。
「妹が可愛いのは、いいことだと思う。確かにな。
だがいくら可愛くても、妹とはセックスできないぞ。
いいのか?」
「・・・は?」
「何を、言っている?」
「いくら可愛い、誰よりも美しいと愛していても、
家族との姦淫行為は神に反する。
俺に妹はいないが、イタリアがいる。
イタリアとロマーノ、どちらがいいかという会話をスペインとするならば、
お前らと同じ状態になるかもしれない。
これには意味があるだろう?
お前らの言い争いは意味がないことだと、俺は思うが。」
まぁ、俺が言い負かして終わりだろうがな。
その様子を頭で想像すると、
スペインのあのペースに飲まれて、
結局俺が負けてしまうところも浮かんできて、笑ってしまった。
空想から帰ってくると、俺の言葉に納得したのか、二人が俯き黙っている。
「お兄さま、イタリアさんがパスタを作ってくださいましたよ。」
「お兄さん、ヨイ友達お持ちネ。ワタシ羨ましいヨ」
「お話終わった?パスタ食べよ!朝ごはんからパスタなんてすごい豪華〜!」
にこにこ笑いながら、女の子たちに混ざってイタリアが山盛りのパスタを持ってくる。
「あぁ、リヒテンシュタイン・・・お前も手伝ってやったのか?」
「えぇ、本場イタリアのパスタが食べられるなんて、
イタリアさんがお兄さまのお友達で、
私がお兄さまの妹で本当に良かったです。」
「台湾、イタリアくんに変なことされませんでしたか?」
「お兄さん、変なことって何ネ?」
二人の妹たちが輪に入り、一気に華やかになる。
可愛いな、二人の言っていることは何も間違っていない。
パスタを食べて、俺とイタリアは家に戻った。
「ドイツさんって・・・判断基準が・・・
合理主義って言うんですかねぇ・・・」
「奴は昔からああいう奴だ」