伝説の秘宝を探せ!!
菊はここではなかなか見かけない金髪を見つけ、彼の傍へ近寄って行った。
たまにしか、ここには来ない。
彼は読書家ではない。
梯子を掛け彼は大判の書物を読んでいた。
「アルフレッドさん、いかがされたんですか」
多少、声が小さい方だとは思う。
しかしいつもなら反応しないはずがない彼が、本に集中しているらしい。
菊はそんな彼をちょっと見直した。
「アルフレッドさん!何か探し物ですか?」
「えっ、菊っ?ってうわわわぁっ!!」
「わああぁっ!!」
バランスを崩しアルフレッドが菊の上へ倒れ込む、
大判の書物は菊の顔を直撃し、
菊の1.5倍以上はあるだろうアルフレッドの体重が一気にのしかかって、菊は一瞬意識を失いかけた。
「いってて・・・菊、大丈夫かい?ごめんよ、不慮の事故だ」
のしかかったままアルフレッドは菊の様子を気遣う。
「・・・すごく痛いし重いです・・・鼻血とか出てませんか?」
「・・・大丈夫、菊の顔は相変わらず可愛いままさ」
「戯言を言ってないでどきなさい!!」
菊は退かすことのできない体力を恨みながら、アルフレッドを怒鳴り起き上がる。
このまま帰ろうかと思った途端に、見慣れた茶髪がこちらを心配そうに覗き込んでいることを発見した。
「・・・フェリシアーノくん?どうしましたか?」
「だだ、大丈夫ぅ、菊?すごい音だったよ、俺びっくりしちゃったぁ。」
彼もまた、図書館には珍しい顔だ。菊は妙な顔が集まっていることに、寒気を感じた。
「・・・アルフレッドさんにフェリシアーノくんが図書館にいるなんて、珍しいですね。」
「あぁ、説明するよ菊。そっちに座っておくれ。
フェリシア、例のページを」
「は〜い」
どうも二人は一緒にこの図書館に来たようだ。
しかし見つけられない二人の繋がりに、首を傾げる。
フェリシアーノの恋人ルートヴィッヒは、
わざわざ可愛い恋人が一人で、アルフレッドの国一の図書館に来ることを、許可したのだろうか。
「・・・ねぇ〜アルフ〜あのサイトどこだったっけぇ〜?英語あんま判んないから判んないよぉ」
「え〜っ?しょうがないなぁ、え〜っと・・・これだよ!菊見てくれ、これが僕達が探す伝説の秘宝だ」
「・・・これは、石板ですね・・・何か、刻んである・・・象形文字・・・?」
モニターに近づき、それをよくよく見つめる。
何かが書いてあるが、それが何なのかは判らなかった。
「これを見つけたとき、僕らは何かを手にすることができる・・・それが何なのかは判らない。
伝説の秘宝であるのかも判らない。だけど、僕は探したいんだ。
秘宝を追う冒険の旅、良いだろう?一緒に探さないかい?」
「えぇ、構いませんが・・・フェリシアーノくんは何故、アルフレッドさんと?」
アルフレッドが一人でそういう訳の判らないものを探すのならば、よくあることだ。理解できる。
ルートヴィッヒは見た目以上に嫉妬深く束縛したがるタイプなのだ、
何故フェリシアーノを一人にしたのか。
「俺?俺はねぇ、何か判んないんだけど・・・ルートがね、行って来いって。
すごいものが見つかるからって。」
「ルートヴィッヒさんが?」
ますます疑問は深まるばかりで、菊は眉をひそめる。
「最初僕はアーサーとルートヴィッヒに声をかけたんだ。
二人とも好きじゃないが、こういうものの解析には優れてる。
そうしたら、ルートヴィッヒがフェリシアと一緒に探してくれって、言ってきたんだよ。
解析は彼に依頼中だ。」
アーサーさん。
ルートヴィッヒさん。
両方に断られ、代わりにフェリシアーノくんが・・・
菊はやっと理解できた。
「は、ぁ・・・そうですか。
判りました・・・この件なんですけど、私用事を思い出したのでお暇させていただきます。
よろしければ、私の代わりにヨンスさんを。」
「え〜っやだぁ菊ぅ、一緒に探そうよぉ〜。それに俺、ヨンスはヤだぁ。」
「あぁいけない、サディクさんとのお約束の時間が迫ってきました。ではごきげんよう」
「またあの仮面と一緒なのかい菊!!酷いよ、恋人の僕の立場は・・・」
「え〜?アルフって菊と恋人なのぉ・・・」
あの石板が示すものを予想して、笑いが止まらなかった。
確かに、あの二人に欠けるもので、菊が私の代わりと話した隣人のイムにも足りないものだ。
もしその秘宝を手に入れることであの3人に欠けたものが手に入るとするならば、何としても手に入れたいだろう。
きっとアーサーもルートヴィッヒも、それは切なる願いのはずだ。だからこそ菊は笑いが止まらなかった。
約束などしていなかったにも関わらず、彼は会ってくれた。
しかし笑い続ける菊を、やはり不審に思ったようだった。
「菊、どしたい?さっきからよぉ」
「ふふふ・・・すみません、サディクさん・・・あ、そうだ。」
「ん?」
「空気が読めなくて迷惑かけてる方とか、ご存知ないですか?」
作品名:伝説の秘宝を探せ!! 作家名:もかこ@久々更新