白ユニ習作
「可愛いね」
「きれいだね」
向けられる言葉は、賛辞の言葉。
温かい手で髪を撫でられたり、時には頬にキスが降ってくる。
確かに愛情を向けられているのに、少女は同じ感情を返すことが出来なかった。
「白蘭」
「なんだい?ユニちゃん」
「やめてください」
出来るだけ角が立たないように。
出来るだけこの男を怒らせないように。
慎重に声の高さや速さ、そして表情を作る。
そんな少女の努力を知ってか知らずか、男は笑顔で言葉を返す。
「嫌だよ。せっかくこうやって、ユニちゃんに触れるんだもん。触れる時に触っておかないと」
「…楽しいですか?」
「うん、楽しいよ」
髪から肩、肩から手へと、少しずつ男の手は下へ降りてくる。
その手の感触に少女の心拍数は上昇の一途を辿っていく。
「だってさ、ユニちゃんが動揺するのってこういう時くらいでしょ」
心拍数の変化と共に赤みがさした顔を覗き込み、男は言葉を続ける。
「だから、楽しいんだよ?」
その表情は、満面の笑み。
少女とは対照的な表情だった。