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MEMORY 死神代行篇

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 一護の依頼で浦原が用意した物の代金は、夏休み明けに纏めてと話が付いている。利子分だけはと言って、偶に浦原商店の表向きの買い物を定価で購入していくばかりか、平日に友人達を連れて来て、学校帰りの買い食い場所として浦原商店を奨励していたりする。部活動に入っていない分運動不足になるのだからと、学校から浦原商店、浦原商店から自宅なり駅までを歩こうと誘っているらしい。
 浦原商店からクロサキ医院まで歩いて帰宅すると、付近で事故があったとかで一心と妹達がバタバタしていた。
 一護の記憶では事故に遭ったのは茶渡で、連れていたインコから夏梨が『シバタユウイチ』の記憶を感じ取った筈だ。
 狙われている自分がいては周囲に迷惑が掛かると感じているらしい茶渡は、大人しくしている事を拒否して動こうとしたが、虚に負わされた傷は流石にダメージを与えていた。
 一護は茶渡の事も心配ではあったが、記憶の中で夏梨が『シバタユウイチ』に感応して苦しい思いをしていた事も思い出し、それとなく夏梨を気に掛けていた。
 翌朝、常ものように朝のジョギングから帰った一護が茶渡の病室を覗くと、既に目覚めた茶渡はいなくなっていた。今の茶渡は霊絡を追えるほど霊力が剥き出しになってはいない。記憶にあった通り、『シバタユウイチ』の霊絡を追うしかないだろう。しかし、まずは夏梨の様子を見てからだ。途中でルキアと別れて夏梨を連れ帰った為にルキアは要らない怪我をしたのだ。
 未だにルキアの霊力が回復した気配はない。という事は、記憶通り、浦原はルキアの魂魄から霊力を奪い、只の人間にしてしまおうとしているのだろう。一護の依頼よりも自分の目論見を優先した以上、義骸の代金は契約違反を理由に払わなくても良いだろうと決め込む心算でいる。
 茶渡がいなくなった事で騒ぎ立てる一心に、夏梨の具合が悪いらしいから静かにしろ、と言い置いて、一護は夏梨の話を聞くべく双子の部屋へ足を踏み入れた。
 夏梨は記憶通り、シバタユウイチに感応して、臨死体験をしてしまったようだ。

「一、姉……あの子を……お願いだよ……あの子を、助けて、あげて………。」

 夏梨が語った内容も記憶通りだった。記憶の中では夏梨から聞いた事と、シュリーカーが自慢そうに語った事だけだったが、浦原の記憶で裏を取っている。新聞記事なら兎も角、浦原の記憶で裏を取るというのも変な話だが、近い過去の事なら疎外因子さえなければ下手な記録媒体よりも余程浦原の記憶の方が正確だ。

「理解った。安心して休んでな。」

 部屋を出た一護を、夏梨の具合が悪いならと構えていた一心に、医者でどうにか出来る事態じゃない、と言い置いてルキアに目を向ける。

「夏梨は大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃなくてもこのままじゃ変わりない。原因を取り除いてやるしかないさ。」
「一護?」

 二人の会話に割り込んできた一心に、一護は霊障だ、と告げる。

「霊障……。」
「夏梨の感度が良いからこその状態だから、原因を解決してやる以外に楽にさせてやる方法はないよ。」
「原因………。」

 眉を顰める一心に、一護は瞳に物騒な光を浮かべた。

「チャドに次々怪我させた上に、夏梨を泣かせたんだから、只で置くもんか。」
「か、夏梨が泣いたのか⁉」

 余程驚いたのか、一心の声が裏返っているのでルキアは目を丸くした。

「夏梨は自分の為には泣かないよ。」

 一心を落ち着かせる為と、ルキアへの説明で一護は口を開く。
 インコに憑いている霊は、連続殺人の被害者の子供の霊だ、と一心に告げて、一護はルキアを促して茶渡を探す為に家を出る。

「私は向こうを……。」

 手分けを申し出るルキアに、一護はルキアの手首を掴む。

「闇雲に探しても居場所なんて判んないよ。少し待って。」

 言って一護は覚えているインコに憑いていた子供の霊絡を辿る。
 意識を集中すれば出来ない事ではない。戦いながらやれと言われたら無理だが、他に何もしなければ、この程度なら何とかなる。
 一方ルキアは、急に黙って集中し始めた一護を不審そうに見ていたが、一護が霊絡を視覚化させるのを見て取り、驚愕に目を瞠る。霊絡の視覚化など上位席官でも早々出来る事ではないからだ。
 一護は死神の力を封印されていたと言っていたが、それにしても現世の生き人である以上、自分が死神を務めてきたよりも遥かに短い時間しか生きていないのだ。その中で封印されていたというなら、ろくに使った事もない力の筈だ。なのにこの短時間でそんな高等技まで実践で使えるなど、生き人にそんな力の持ち主があり得るなど聞いた事もない。
 一護が唯純粋に目の前の人を助けたいと願っている子供でなければ、疑心暗鬼になってとても一護と組んで仕事など出来ないだろうと思う。たとえ不信感を抱いてもそれを打ち消すだけの純粋な正義感と他者を守りたいと願う心が透けて見えるから、ルキアはある意味安心して、心配しながら見守る事が出来るのだろう。
 駆け出した一護の後に続きながら、ルキアは唇を微かに綻ばせた。
 二人が茶渡を見つけた時には、茶渡は姿の見えない虚に反撃の術もなく、鳥籠を抱えて逃げ続けていた。姿を隠している為、一護にもすぐには捉える事は出来なかったが、シュリーカーは近くなった一護の霊力を嗅ぎ付けて後ろから近付いた。

『お前、美味そうな匂いがするな。』

 耳元に流し込まれる声に微かに眉を顰めたが、一護は聞こえないふりでルキアに合図を送る。ルキアは速度を上げて茶渡に追い付くと、予め一護に指定されていた場所まで茶渡を促した。

「転入生、どうして……。」
「一護の指示だ。お前には敵の姿は見えていないのだろう?」
「一護には、見える、のか?」
「私もだ。」
「ム……。」

 何処にいるか判らない状態にされる方が不利だから見える所にいろ、とルキアが言うと、茶渡は無言で従おうとしたが、インコに憑いたシバタが反対する。

「オジチャン、ダメダヨ。オネエチャンモオニイチャンモアブナイヨ。」
「案ずるな。私達には戦う術がある。」

 言い切るルキアにインコは不安そうだが、茶渡は一護を信頼している。
 一護がそうしろというのなら勝算あっての事だと信じて、茶渡は確りと鳥籠を抱えてルキアに従った。
 シュリーカーが小物の虚を数多く従えている事を知っていた一護は、素知らぬふりでひらりひらりと躱していく。
 獲物と決めた相手に恐怖心を与えて怯えるさまを楽しむ事を醍醐味と心得ているシュリーカーは、気付いていない一護に、なんとか自分の置かれている恐怖の状態を気付かせようとしているが、気付かぬふりをしているだけの一護に恐怖心などある筈もない。
 ルキアと茶渡が指定した位置に来るのを見計らって、一護はアクロバットの動きでシュリーカーを躱し、ルキアの背後に降り立つと悟魂手甲で魂魄を抜いてもらい、斬魄刀を手にシュリーカーに斬り掛かる。

「なっ⁉ 死神っ⁉」
「その通り!」
「今まで俺に気付いてなかったのは……。」
「そんなもの、ふりに決まってんだろ。」
作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙