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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 いきなりプリキュア同士の戦いが始まって、チクルンが騒いでいた。言葉を投げかけられたモフルンとリリンは困ってしまう。
「ミラクルとマジカルは、魔法界を守るために闇の結晶を集めてるモフ」
「ダークネスとウィッチは、ダークネスのお母さんのために闇の結晶を集めてるデビ」
「それぞれ何とかの結晶を集める目的が違うのかよ。だからって、仲間同士で戦わなくてもいいじゃねえか……」
 どちらもプリキュアなので、チクルンには仲間同士に見えていた。

 ダークネスの攻撃で宙に投げ出されたマジカルが宙返りして体を立て直し、花の絨毯に着地すると、間もなく跳んできたダークネスが少し距離を置いた場所に降りてくる。互いに直立し、構えもせずに相手を見やる。にやりと弧月を浮かべるダークネスに、マジカルは我慢できなくなって言った。
「あなたはっ!」
 勢いよく切り出したその言葉とマジカルの姿に、彼女の底に沸騰する怒りが現れていた。しかし、
その先に声が続かなかった。マジカルの中で何かが邪魔をして言葉が殺されていた。その理由をはっきりと悟っていたダークネスがいった。
「あなたの言いたいことはわかるわ。ええ、そうよ。わたしはミラクルを惑わせるために嘘をついたのよ。あなたがミラクルから聞いた話は、なにもかもまるっきり嘘よ。どう、これで安心したかしら?」
「っ…………」
 マジカルは渋面のまま黙っていた。ダークネスは小さく笑っていった。
「あなたはもう何もかもわかっているんだわ。ただ、わたしの話が嘘だったらいいという希望を抱いていただけよ」
 それを聞いたマジカルが拳に力を込めて震わせた。
「あなたの身に起こった不幸は気の毒だと思うわ。でも、それを利用してミラクルを苦しめたことは許せないわ! あなたは自分の行為で亡くなったお母さんを恥ずかしめているわ!」
「きれいごとだけれど、正しい意見だと思うわ。マジカルは冷静ね。ミラクルはあんなに傷ついているのに、どうしてあなたは平気なのかしらね? 同じ話を聞いているのに、不思議だと思わない?」
「なにが言いたいの!?」
「わたしたちにはあって、ミラクルにはないものがある。ミラクルの弱さはそこから来ているのよ。あの子は本当に苦しいっていうことを知らないのよね」
「そんなことはないわ! ミラクルだって今まで苦しいことを散々乗り越えてきているんだから!」
「その苦しい時には常にあなたが一緒だったでしょ。わたしが言っているのは、もっと暗くて深い場所にある苦しみよ。孤独と向き合い、一人で戦う苦しみよ。ミラクルは、みらいは、いつも元気で明るくて、あの子を見ていると幸せが透けて見えるのよ。素敵なお母さんに、優しいお父さん、おばあちゃんやおじいちゃんもいるかもしれない。そんな幸せな家庭に、ともだちにも恵まれていて、なにもかもが楽しい。あの子のそういう姿を見ていると憎らしくなるくらいよ。本当の苦しみを知らず、そのうえ他人のためにがんばちゃう良い子だから、ミラクルはわたしの不幸を自分の事のように受け止めて壊れてしまったの」
「ミラクルのことをそこまでわかっていて!」
「あなたが冷静でいられる理由も教えてあげましょうか? あなたのことも色々知っているのよ。エミリーやケイやリズ先生からも情報をもらったからね」
 ダークネスのその言葉が、今にも向かってこようとしていたマジカルの体を止めた。マジカル自身がその理由を知らないはずがないのだが、ダークネスはあえて声に出して言った。
「あなた、一年生の頃から付き合っているお友達が一人もいないでしょう。仲がいいのはかつての補習組が主だけれど、2年生から知りあった何人かのクラスメイトとも交流がある。これって普通じゃないわ。魔法学校に入って最初の一年間に友達が一人もいないなんて異常よ」
「黙りなさい!」
 マジカルは自分の心に暗雲が立ち込めるような嫌な気分になって叫んだ。ダークネスはかまわず話し続けた。
「あなたは勉強は一番だったけれど、魔法は最低だった。これって最悪よ、確実にいじめられるわ。ラナのように魔法も勉強もなにもかもダメな方がはるかにいいわ。それだったら周りの人たちも仕方ないって思ってくれる」
 マジカルは過去の嫌な記憶が無理矢理掘り起こされ、無意識のうちに視線が下がり視界に野花が入ってきたが、花の姿など見えてはいなかった。
「あなたは頭がいいから、みんな一応は尊敬するような態度をとるでしょう。でも陰ではあなたの悪口を言うのよ。友達を装って近づいてくるクラスメイトの瞳の奥には、常にあなたを憐れむ光がある。中には本当に意地の悪い人がいて、あなたにわざわざ聞こえるようにこう言うのよ。いくら勉強ができても、魔法ができないんじゃ意味ないじゃない!」
 ダークネスの態度も言葉も、かつてマジカルを傷つけ苦しめた人間達にそっくりだった。忘れたい過去の記憶、クラスメイトの間に漂う空気に圧し潰されそうになっていた自分を思い出し、マジカルは本当に痛むとでもいうように片手で胸を押さえた。
「あなたは周りの人間の心が見えていたから、自分の殻に閉じこもって誰も寄せ付けなかったんだわ。そして孤独と戦いながら努力して、勉強だけは一番をとり続けた。その経験があなたの心を強くしたのよ。わたしにも似た経験があるわ。ウィッチもいじめられたり家族を亡くした辛い記憶がある。ミラクルだけが心に闇を持っていない真っ白な状態なのよ」
 マジカルが苦しみに耐えて、ぎゅっと目を閉じて胸のドレスをわしづかみにする。それから目を開けて胸から手を下ろした時には、いつも通りのマジカルに戻っていた。
「言いたいことはそれだけ? わたしの心を乱そうとしても無駄よ」
「あら、残念ね。少しは効くと思ったんだけどね」
 ダークネスはマジカルの反応が自分の予想と違っていたので少しだけ驚いていた。二人とも同時に構えて、マジカルの方が爆発的な勢いで飛び出した。そしてダークネスは迫ってきたマジカルの右ストレートをあっさりと受け止め、その拳をしかりと握り込んでしまう。声もなく驚くマジカルにダークネスが言った。
「力がだいぶ落ちているわよ」
 ダークネスがその手を捻じって引き上げると、マジカルが片目を閉じて苦悶を浮かべる。
「計算通りに戦えないのは辛いでしょう、特にあなたの場合はね」
「わたしはあなたに感謝しているわ」
「なんですって?」
 マジカルの意外すぎる台詞にダークネスが虚然(きょぜん)となる。刹那、マジカルが足を出してダークネスは危うく食らうところだった。マジカルから手を放して後ろに跳んだダークネスは、マジカルの真意が計れずに黙っていた。さっきまでの勝者のような笑みが顔から消えていた。
「わたしは今まで過去の記憶から逃げていたわ。過去なんて気にしなくていいと思ってた。今を頑張って未来に向かっていけばいいって思うようにしていた。でも、それは間違いだったわ。あなたが過去を思い出させてくれたから、とても大切なことがわかった。ミラクルが、みらいがわたしを辛い過去から救ってくれたのよ。そうでなければ、わたしは今でも自分の殻に閉じこもっていたと思うし、ミラクルがどんなにかけがえのない存在なのか再認識させてもらえたわ」