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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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 朝、学校に生徒が集まる前の少し早い時間に、みらいとリコが校長室に入ってきた。リコは校長の隣にいる人を見て少し驚いた。その女性は微笑んでリコのことを見つめていた。
「お姉ちゃん?」
「二人とも、朝早くからすまんな。状況を手短に説明しよう」
 校長が言いだすと、リコが視線を泳がせてしきりに姉のリズを気にしていた。
「二人とも大丈夫よ。あなた達が伝説魔法つかいプリキュアだという事は校長先生から聞いているから」
 みらいとリコは声もなく驚き校長を見つめる。
「リズ先生にはこれから君たちの補助をしてもらおうと思ってな。故に、今まで隠していた秘密をすべて打ち明けておいた。リズ先生なら君たちも安心だろう」
 リコの疑問に曇っていた顔が瞬間に明るく変わる。
「はい! お姉ちゃがサポートしてくれるなら百人力です!」
「リコのお姉ちゃんも一緒で嬉しいモフ」
 みらいに抱かれているモフルンが言った。みらいも嬉しそうだった。それから校長が急に神妙になって話し始める。
「闇の結晶が魔法界の各地に出現しておるようじゃ。わしの弟子や教え子達に頼んで集めさせておるが、思うようにはいっていない。各地でヨクバールに邪魔され、せっかく集めた闇の結晶を奪われる事件も発生しておる。君たちには急ぎ闇の結晶を集めてもらいたいのだが……」
 校長は少し思考して続ける。
「勉学をないがしろにするわけにもいくまい。勉強もプリキュアも両方頑張るのだ」
「はい……」
 ちょっと大変そうだなと思いながらリコが返事をした。
「明日から魔法学校でお勉強! わくわくもんだよ! それにみんなにも会えるし! 早く明日にならないかな」
「みらい」
 どこまでも前向きなみらいに、リコは今更ながらかなわないなと思っていた。

 魔法学校に箒に乗った生徒たちが一斉に集まってきていた。学校の近くに家のある生徒は箒通学になる。が入学したての頃はまだ箒に乗れない生徒も多いため、大型の空飛ぶ魔法の絨毯が学校から手配されている。これはナシマホウ界でいうところの通学バスのようなものだ。どの生徒も校門の近くに降りてきて、徒歩で門をくぐって校内に入っていく。
 小百合たちは一番に登校してくる生徒の集団に入っていた。ラナは地面に降りるなり大きなあくびをする。
「ふわ〜、何もこんなに早く来なくてもよかったんじゃなあい?」
「わたしはあんたと違ってやることが山ほどあるの。少しでも早く図書館で勉強を始めたいわ」
「本当にそれ全部もってくのぉ?」
 ラナは小百合が持っている桃色の手提げかばんを見つめた。彼女らの近くを飛んでいたリリンが小百合の肩に乗って手足の力を抜いて垂れ猫になる。
「本がいーっぱいデビ!」
 桃色の鞄にはラナが一年生から2年生まで使っていた教科書が全て入っている。
「できるだけ早くこれを全部勉強して、ほかの生徒と同じスタートラインに立たないとね」
「本当にそれ全部やつるもりなの?」
「当然よ」と小百合が言うと、ラナが奇怪な生物にでも出会ったような異様な目つきをする。
「それ全部って、すっごく大変だよねぇ」
「どうってことないわ。人の10倍勉強すればいいだけのことよ」
「あわわ、小百合が神様に見えるよ……」
「なにを訳の分からないことを言ってるのよ」
 それから二人は校舎に向かって歩きながら話をする。
「それにしても、フレイア様はどこにいるのかしら?」
「先に魔法界に行くっていってたのにねぇ」
「小百合、リリンはずっとこのままデビ?」
「ばれたら絶対めんどくさいから、そのままぬいぐるみのふりしてて」
「了解デビ……」
 リリンは小百合の肩から落ちないようにただのぬいぐるみのふりをするのが大変そうだった。

 チャイムが鳴り響き授業の始まりを告げる。魔法図書館に足を踏み入れた小百合は、その圧倒的な書量の前に呆然自失となっていた。図書館の外見は非常に巨大な樹の幹なのだが、内部は本棚によって塔が築かれていた。本がぎっしりと詰まった本棚が円筒状に並び、それが視界がかすむ程の高さまで積みあがっている。図書館には数十という机が並んでいて、そのスペースと本棚の高さを考えると、その規模はナシマホウ界にある一般的な図書館の数百倍はありそうだ。
「……これほどの規模の図書館なら、本を検索するシステムがあるはずだわ」
 小百合は冷静になって辺りを見ていく。すぐに入り口の近くに直立している丸太のようなものを見つける。近づくと少し斜めになっている丸太の切断面にタッチパネルのようなものがあって、そこに魔法界の文字が浮んでいる。
「あったわ」
 それはタッチパネルと同じで指で触るだけで操作できた。
「これで必要な本は探す事ができる。でも……」
 小百合が見上げると、館内は本棚2段ごとに階層が分かれていて、各階層の本棚の周囲に円を描くように回廊があり、回廊の円の中央を渡り廊下が走る。そして無数に浮かぶヘチマのような細長いランプが館内を照らしていた。小百合がいくら探しても、上階に行くための階段が見当たらない。それどころか、本棚一つにしても小百合の背丈の倍の高さがある。普通の図書館には高い場所の本が取れるように脚立など置いてあるが、そんなものはないし、あっても本棚が長大すぎて役に立たない。
「……これって、魔法を使って本を探すことが前提の構造ね」
 必要な本を探し当てても、空でも飛べなければその本を手にすることは叶わないのだ。小百合はため息をつくと、近くの机の前に落ち着いて机上にピンクの鞄ととんがり帽子を置いた。小百合の肩でじっとしていたリリンは机の上に飛び降りて、端の方で足を伸ばして座る。
「知りたいことは色々あるけど、まずはこれからね」
 小百合はラナから借りてきた一年生の分の教科書を鞄から全部出した。
 小百合は速読で魔法力学の教科書を読み、ノートにペンを走らせ、時々手の中でペンを回しては教科書を読み、ノートを書く。そうして30分ほどしてのってきた頃に邪魔が入った。
「あなた、こんなところで何をしているのですか!? もう授業はとっくに始まっているのですよ!」
 そのキンキン声に当てられて、小百合は悪寒がして肩をすくめた。すぐに立ち上がって振り向くと、図書館の入り口に威厳をまとった女性が立っていた。紫のとんがり帽子に同色のケープ、薄紫色のドレスはくびれた腰から膨み足首に向かってすぼんでいく瓜実型のスカートになっている。体格がぽっちゃりしているせいで威圧感もある。彼女は両手を腰に当てて大股で小百合に近づいてくる。小百合は会釈して彼女を見上げた。女教師は目を怒らせていた。
 ――きっと、この人が教頭先生だわ。
 小百合の目の前にいる人は、ラナの話から小百合が想像していた通りの人だった。
「どういうつもりですか? それに、その帽子のアップリケとケープのブローチは何なのです? 校則違反ですよ!」
「申し訳ありません、校則違反のことは謝ります。実はわたしは、この学校の生徒じゃないんです。校長先生から特別に許可を頂いて、ここで勉強させてもらっています」
「生徒じゃないですって? でも魔法学校の制服を着ているじゃありませんか」
「この制服はお借りしたものです」