二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

INDEX|88ページ/168ページ|

次のページ前のページ
 

 小百合は一番前の席にリコと並んで座っているみらいの前に駆け寄り、隣のモフルンと遊んでいるリリンを抱き上げる。
「騒がせて悪いわね、ハハ」
 小百合が自暴自棄に近い笑いを残してみらいの前から黒板の前に走って戻る。やがて教室は静かになるが、変な空気になってしまった。気を取り直して小百合はいった。
「聖沢小百合です、よろしくお願いします」
 リコが小百合の姿を見つめて、ついに来たと思った。これから小百合がこの教室でどんなことをするのか、リコの目には見えていた。
「知っている方も多いと思いますが、彼女は図書館で勉強し努力を重ねてこの教室にやってきました。もちろん、魔法の杖もちゃんと持ってます」
 その瞬間に教室が一気にどよめきに包まれる。ほとんどの生徒が小百合が魔法を杖を手に入れた事実を知らない。そもそも、どうやって魔法の杖を手に入れたのかと謎が謎を呼んでちょっとした騒ぎになった。
「皆さんお静かに」
 アイザック先生の一言で教室が再び静まる。
「お〜い、小百合! やったねぇ! おめでと〜っ!」
 今度はたった一人の生徒によって静寂が破壊される。アイザック先生はやれやれと思う。ラナが教室の端の方で立ち上がって小百合に向かって両手を振っていた。恥ずかしいことをしているのはラナなのに、小百合の方が恥ずかしかった。
「まったくあの子は……」
「ラナさん、お静かに」
 先生に注意されたラナは「はぁい」と嬉しそうな笑顔のまま座った。
「小百合さんのたっての希望で、ラナさんの隣の席に座ってもらいます」
 それを聞いたラナが感動のあまり目を潤ませる。小百合が颯爽と歩いてきて隣に座ると、ラナは胸に込みあがる嬉しさを抑えるように握った手を胸に当てて言った。
「小百合、隣にきてくれてありがとう」
「どうせあんたの事だから、授業中に寝たりしてるんでしょ、自分は魔法なんて使えないから勉強なんていいや〜って感じで」
「あ、え〜とぉ」
 ラナの目が完全に泳いでいた。
「安心しなさい、叩き起こしてしっかり勉強させてあげるから」
「ああ〜、小百合、やっぱりリコの隣の方がいいんじゃなあい?」
「わたしにはあんたの魔法を止めるという使命もあるから、いつでも近くにいなくちゃね」
「あう〜、わたしの楽園が消えていくよぅ」
 ラナは涙ながらに言うのであった。

 1時間目は魔法力学の授業である。これは主に物を動かす魔法に関する勉強で、ナシマホウ界の物理学に相当する。ラナが5分もしないうちにうとうとし始めるので、小百合は授業を聞いてラナを起こしての繰り返しになり、なかなか大変だった。授業が終わりに近づいてきた時に、アイザック先生が杖を振る。すると、黒板に式が現れた。
「これは球体に対する魔力の作用を現す問題です。ちょっと難しい問題ですが、できる人」
『はい』と二人の返事が聞こえた。難易度の高い問題はいつもリコが前に出て解くのが常であったが、今日はもう一人手をあげていた。
「ほうほう」
 アイザック先生は手をあげているリコと小百合を順番に見て言った。
「では小百合さん、やってみて下さい」
 小百合は無言で立ち上がり、早足で黒板の前へ。小百合がチョークを持つと、すこし教室がざわついた。小百合は素早く手を動かして式を完成させていく。
「なんで魔法を使わないんだ? 魔法の杖もってるんだろ?」
 ジュンが疑わしい目で小百合を見つめていた。
「できました、どうでしょうか?」
「正解です」アイザック先生が満足げに頷いて言った。
「すごいよ小百合、わたしなんて全然わからなかったのに」
 ジュンの隣でケイが尊敬を込めて言っていた。ジュンは「なんで呼び捨て?」と思っていた。
「あいつ、もしかしたらリコと同じくらい頭いいのか?」
 魔法の杖を手に入れた小百合をもうバカにする生徒はいなかった。しかし、まだ誰も小百合の魔法を見ていないので疑っている者はいた。
 授業が終わって休み時間になると、小百合の周りにわっと人が集まってくる。
「そのぬいぐるみなに? どうなってるの?」
「どこから来たの?」
「なんでずっと図書館で勉強してたの?」
 次々と飛んでくる質問に小百合はよどみなく的確に答ええていく。
 リコたちは近づけずに取り巻きの外にいた。
「これじゃお話しできないね」
 みらいが少し残念そうに言うと、小百合の方が気づいて席を立った。
「ちょっと失礼」
 小百合が席を離れてみらい達に近づいてくる。その後ろにラナもくっついていた。
「ケイも同じ教室だったのね」
 誰も小百合がケイに話しかけるとは思っていなかったので、みんな驚いた。みらいがさっそく突っ込んでくる。
「ケイと小百合って知り合いだったの?」
「図書館でお友達になったんだよ。小百合にわたしの友達を紹介するね。こっちがジュンで、こっちがエミリーよ」
 ケイが順に紹介していく。
「小百合です、よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします、エミリーです」
「よろしく」
 少し恥ずかしそうに頭を下げるエミリーに対して、妙に丁寧な小百合がジュンは少し気にくわなかった。そんなジュンが小百合の隣で笑顔をふりまいているラナを見て言った。
「で、隣の爆箒(ばくそう)ラナはあんたの知り合いなのか?」
「爆箒ラナ?」
「そいつのあだ名だよ。一部の魔法つかいの間では有名なんだ。なんもかんも魔法はダメなのに、箒に関してだけは天才的なんだからな」
 みらいもリコもそれは知らなかった。聞いた小百合は感心してしまった。
「爆箒ラナとは言い得て妙ね」
「わたしって、そんなふうに呼ばれてたんだ〜」
「あんた、自分のあだ名も知らないのね」
「初めて聞いた〜」
「のんきな奴だなぁ」
 と呆れ気味に言ったのはジュンだった。
「ラナはわたしの親友よ」
「小百合とはナシマホウ界でお友達になったんだよ! お城みたいな家に一緒に住んでたの!」
「ラナ、余計なこと言わないで!」
「なにぃっ、マジか!?」
 ラナの話にジュンが食いつく。その声が大きかったのでまた周りに生徒たちが集まってきて休み時間が終わるまで始末に追えなくなってしまった。
 その日の授業では、難しい問題が出されると常にリコと小百合の二人が手をあげて、それぞれ見事に正解を答えていた。この一日で小百合の頭の良さがクラスメイトに示された。

 この日の魔法の実技では、上級者用の箒を操る訓練が行われた。2年生から始まっている授業なので今が最終段階で、大抵の生徒は柄が緑色の箒で空を自由に飛んでいた。小百合はというと、ラナの指導の元に地面の上で柄がピンク色の初心者用の箒にまたがっていた。
「後は簡単! 魔法の呪文を唱えてお空に向かってゴーだよ!」
 小百合は必要以上に緊張して体が震えている。顔は苦しいのを我慢でもするようにこわ張っている。ラナはそんな変な状態の小百合を今まで見たことがなかったので、首を傾げてしまった。
「小百合、どしたの?」
「な、何でもないわ、行くわよ!」
 小百合は柄を握る手に力を入れて言った。
「キュアップ・ラパパ! 箒よ飛びなさい!」
 小百合の足元から空気の波動が起こり、舞い上がった埃がドーナツ状に広がる。そして、小百合の足が地面から離れた。