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神殿長ジルヴェスター(7)

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 「マインによると、売りたい商品の構想があったが、虚弱体質のせいで作る事が難しく、作れたとしても商人になって売買する体力も無かった。だが相手をしてくれる商人にはツテがあった。
 ルッツによると、商人になりたいが、職人一家に生まれた為にツテもなく、協力処か反対されていた状況で、どうしようも無かった。
 2人は互いの悩みを打ち明けた事で、マインが考え、ルッツが作り、マインのツテでルッツが売る、この方式が出来上がった。
 ベンノによれば、マインは新しい商品の構想を産み出す天才で、それを引き出し、形にするルッツが一番のマインの理解者で、成長を続ける商会にとって2人がなくてはならないそうだ。
 ベンノは始めからルッツを見習いにしようと思っていた訳ではない。断る気でいたが、思う以上に2人がしっかりとした受け答えをした為に、マインの考える商品を実際に作ってこいと、洗礼式前に言ったそうだ。成人でも無理と思われる課題を、2人はこなし、その成果をベンノが高く評価した。そしてルッツは洗礼後にベンノのギルベルタ商会で見習いになったのだ。」
 初めて知った。
「さて。何故、マインを通して知り合い、言葉を交わした時間も圧倒的に少ない私が知っている事を、常に一緒に過ごしている其方等、親が知らぬのだ?」
 だってルッツが何にも言わねえし…。
「其方はザシャ、だったな。」
「は、はい!」
 あ、ザシャの背筋が伸びた。
「其方等兄弟は偶然が重ならなければ、ルッツの働き場所さえ知らなかったと聞いている。何故、知らなかった?」
「…ルッツが…、言わなかったから…、」
 そうだよな。
「それは其方等が聞いても話さなかったと言う事か?」
「い、いや、違う、」
「ならば言い訳するな。」
 ザシャの顔色が青くなる。そんで俺は思い出していた。森へ行くぞって言ったら、仕事だって断られた時の事。嘘つくな、さぼんじゃねえ、だから商人なんかなるなって言われんだよ、って言った。ルッツは仕事だって言ってんだろって怒鳴った。俺より給料多いからってイイ気になるなって言ったんだっけか。
 ジークに迷惑掛けた時もふざけんなって怒ったら、不当な事を言ってきたのは職人の方だ、悪辣な職人もいる、だなんて言ってきたから、頭を叩いた事もある。
 誰もルッツの言う事をまともに聞いて来なかった。ルッツは大店の旦那に見込まれていて、休みの筈の日まで駆り出されて、その分の給料を貰ってる。
 漸くマインがルッツを認めてくれ、って言ってた事を思い出した。
「其方等が何も知らないのをルッツのせいにするではない。ザシャ、増して其方は長兄であろう。弟に責任を押し付けるな。…情けない。」
 長男って理由で叱られる代表になってるけど、俺らにも向けられてるのはひしひしと感じる。
 ジークも思う事があるのか、ぎゅっと拳を握っている。
「ディード、其方等に足りないのは会話だ。ルッツが言わなかったか、其方等がきっちり聞いていなかったか、そんな事を今言っても仕方あるまい。
 始めから商人が悪辣と決め付けず、ルッツともベンノとも話をするべきだ。言わなくても分かると説明を省くな。其方等に商人の事が見えぬ様に、ベンノも其方等が見えていないのだ。互いに何が見えていないのか、納得するまで話し合え。分からない事があれば、分かるまで聞け。
 今のままであれば、店の利益を最優先に考えたベンノが、ルッツの意見のみで動くぞ。そうなれば大店の権力を持つベンノ相手に其方等は太刀打ち出来ぬ。
 ルッツを想うならば、家族が断裂するべきでは無い。…そうであろう?」
 母さんが親父を見たら、親父は変な事を聞いた。
「アンタは…、誰の味方だ?」
「マインに決まっていよう。」
 マインはルッツの味方だから、此処に来たって事か? ん? 何か俺とジーク以外が微妙な顔になっている? あ、母さんが親父の口塞いだ。
「さて、其方等から他に聞きたい事、言いたい事はあるか?」
「いや…。確かにアンタの言う通りかも知れん。分からん事は何故分からんのか、で済ませて来た。その癖、俺はルッツが何をしているか、何も知らん。それは思い知らされた。言葉が足りなかったんだろう。
 俺は…、ルッツがどうしても商人見習いになると、自分で働く場所を見つけた時は、勝手にしろと言った。好きな様にしろ、って言ったつもりだ。そこまでやったんだ…、ルッツの行動を認めたつもりだ。ずっと反対し続けている訳じゃない。」
 意外過ぎる親父の本音に、俺の僅かな疑問は吹っ飛んだ。
「…それはルッツに言ってやれ。」
「分かった。」
「ベンノには其方が話をしたがっていると伝えて置く。ベンノから連絡する様にとも。…では、私は帰る。」
 こうしてお貴族は帰っていった。

 すげえ疲れた。俺、一言も話してないのに。そんな事も知らないで、森で繰り出される質問劇に俺は今日も怒鳴る。

続く
作品名:神殿長ジルヴェスター(7) 作家名:rakq72747