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神殿長ジルヴェスター(8)

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ジルヴェスター視点



 収穫祭が近付いている。
 マインは母に子が宿ったのだと何やら張り切っていた。いや、浮かれていた、が正しいか。とにかくマイン公房で随分忙しくしている様だ。
 エグモンドが相変わらず五月蝿かったので、一番多く仕事を押し付け、収穫物は孤児院に渡す事にした。
 マインが収穫祭に出向けば、自分の取り分が減る、と考えているのは良く解る。
 表向きはマインを出して、神殿の品位を堕としてはならぬと言い、平民の分くらい自分が引き受けると行ったので、私とマインが一緒に行こうと思っていた処を全て押し付けた。
 そしてあくまで私の代理なので、収穫物は押収するからと言えば、顔色を変えたが後の祭りである。
 頭を下げるなら、考え直そうと思ったが、実家に頼る事を選んだらしい。
 まあ、私の庇護するマインに危害を与える度胸は無いからどうでも良い。序でに私の代理と与えた仕事をいい加減にする度胸も無いしな。
 だがエグモンドよ、八つ当たりは自分の灰色にしろ。
「何をしているのだ、其方。」
 貴重な本に。
「し、神殿長…!」
 灰色にさせるだけでなく、自分も参加者になる程、苛立ったのは分かるが、この図書室の惨状は頭が痛い。
 まさか私が発見者になるとは思わなかったろうし、しかも寄りによって現場を押さえられるとは予想していなかったに違いない。
 …序でに言うなら怒り狂うマインも想定していないのだろうな。
「はあ、もう良い。帰ってきてから罰則は与える。其方はさっさと行け。」
 さっさとエグモンドを追い出す。マインが来ない内に片付けなければ…。
 図書室の本は、別に誰が持ってきた訳では無いし、持ってきたとしても神殿のモノ扱いなので、特に気を付ける事も無い。急ぎなので、アルノー達と共に適当に直していく。
 元は入手順に直されていたが、荒らされた為に、並びの順は最早不明だ。しかし誰も順序等覚えていないから、違っていたとしても特に問題は無い。
 そうして直し終わると、私は図書室を後にした。

 マインから面会依頼が来た。
「どうしたのだ?」
「神殿長、図書室の本の並び変えました?」
 何故、気付いたのだ。やはり本の事で誤魔化すのは難しいか? 
「特に何もしてないが…、何故だ?」
 取り敢えず試しにしらを切る。
「私、図書室の本の並びが入手順と聞いていたので、本を抜き取った時、左右の本の題名と、入り口から見て何番目の棚の何段目から抜いたかを記して、間違えた処に直さない様に、次に読む本を迷わない様にしていたのです。
 けれど先程、図書室に入ると記した内容と大きく違えたモノですから、何か変更でもあったのかと思ったのです。」
 その様な事をしていたのか…。本当に本の為なら手間を惜しまぬな。
「ふむ、そう言えば資料を探した時があったな。その時に直し間違えたのだろう。まあ入手順と言っても、守らなければならないと言う訳ではない。が、其方にとっては困るな、済まない。」
 誤魔化せそうだな、良かった。
「いえ、確認したかっただけですから。…それより神殿長、入手順が厳守する規則でないなら…、使い易い様に並び替えても宜しいのでしょうか?」
 ん? 
「並び替え?」
「はい、誰もが見易く、目的の本が探し易く。そんな風に並び替えるのです!!」
 興奮しているのか、頬が紅潮している。
「落ち着け、また倒れるぞ。」
 釘を指すとハッとしたかの様に深呼吸を繰り返す。
「まあ主に使うのは其方だしな。好きな様にすると良い。終わったら報告は頼む。」
 私はマインに許可を出したのだった。

 本の整理方法からあの様な事が起こるとは…。はあ…。
作品名:神殿長ジルヴェスター(8) 作家名:rakq72747