逆行物語 第二部~ディートリンデ~
物語と現実(3)
そして漸く少しは落ち着いた、と言う時に先代が高みに昇り、悲しみに打ち拉がれた第一夫人も程無く高みに昇りました。
自身も悲しみながらも、両親を失った兄を支える事に喜びを感じてしまう歪さには何て可哀想と同情してしまいます。
しかし兄は同時にフロランツィアに慰めて貰っているのです。そう、シルヴェスターに子供が生まれたのです。しかも男女の双子とあります。ヴィルフルートとルーゼマインと名付けられた、とされています。どうやら物語では実子になる様ですね。
何時かは、と分かっていてもこうして見せ付けられると、やはり苦しい様でした。当たり前です。
あああっ!!! シ、シ、シルヴェスター!!!! 何て言う事を為さるのですかっ!!!! フェルナンドに結婚を勧めるなんてっ!!!! 少しは弟の気持ちを考えなさいっ!!!!!!!!!!
“誰に言われるより、シルヴェスターに言われたくなかった。
「結婚はいいぞっ!! 私もフロランツィアのお陰で前に進めたのだ! 生まれた子供も可愛いっ!!!! 1度失敗して、臆病になるのも分かるが、そろそろ其方も、な。」
(止めてくれ。聞きたくない。
…何故、私達は兄弟なのだ。何故、其方は女性じゃなかったのだ。)
意味の無いグラマラトゥーアの祝福が止むことの無い吹雪の中に散らばる。加護が勝手に着かぬ様に、必死で押し込める。
「私にその意思は無い。結婚よりしたい事が多いのだ。」
(一体、何処までこの言葉が通じるのだろう。具体的に動かれたりすれば、今度こそ、抑えきれないかも知れぬ…。
ああ……、そうだ。良い方法があるでは無いか。)”
そ、そんな!! それで神殿に行かれたのですかっ!!? 確かに神官になれば、結婚しなくても良くなりますがっ!!
しかも神殿に行きながら、今までと同じ様に文官仕事に騎士に……、ああ、どれだけ尽くす気ですか!!!!
え? シルヴェスターが母親と同じ様に、フェルナンドを不遇していると噂が立った? いい気味です!!
“神殿に入り、ドレッファングーアの糸紡ぎが大きな輪を創る頃、王命が出た。隣の上位で大領地のアーレンスバッパの次期アウブ、ディートルンデと星を結べ、と。
「何故、そっとしてくれないのだ…。」
フェルナンドは神殿長を下り、還俗する事が決まっていた。そうなる様に動いていたのはダンケルフォルガーらしい。主にハイスヒッチェ辺りだと、情報で知っていた。
だがフェルナンドは神殿に勤める自分に話が来る訳が無いと高を括っていたのだ。宛てが外れたと言わざる得ない。”
そうですっ!!!! 私との婚約がっ!! ああああああああああああああああああああああ………。
作品名:逆行物語 第二部~ディートリンデ~ 作家名:rakq72747