逆行物語 第三部~ヴィルフリート~
フェルネスティーネ
ローゼマインが目を覚まし、一気に領地は活気付いた。お祖母様の派閥の人間は省かれるが。
貴族院に入学する私に、今年は次期ツェントであるフェルネスティーネ姫の事を再度伝えられる。だが、この時点では王族と関わりを持つ等、誰もが思っていなかった。
唯一、叔父上だけが、ローゼマインが何かを仕出かす事を怖れていたが。
けれど、これから起こる事はローゼマインのせいではないし、エーレンフェストのせいでもない。王族から動いて来たのだから。
初対面時、王族はローゼマインに興味があったのか、幾等か話し掛けていた。そこにフェルネスティーネ姫が割り込んで来られ、何やら意味の解らぬ事を仰られた。ダイキギョウ…? シンソツ…? 他にも良く解らぬ単語を口にしていた。私は内心で首を傾げた。それにしてもフェルネスティーネ姫は…、何か、何かを感じるのだが。
本は劇薬にもなる、と言う事を学んだ私がフェルネスティーネ姫がエーレンフェストについて詳し過ぎると気付いたのは、騎獣作成時だ。
ローゼマインと騎獣の形について話していると、フラウレルム先生から注意を受けてしまった。しかし、頭に響く声だ…。声質はどうにもならぬから、声量を押さえて欲しいモノだ。
そんな事を思った私の前で、ローゼマインが騎獣を作る。侮る様な意見にムッとする。
「グリュン…!」
「まあ、ローゼマインの騎獣は私と同じ乗り込み型の魔獣ですのね。」
気分爽快だ。だがそれは一瞬で終わってしまった。フェルネスティーネ姫、ローゼマイン、先生の会話で先生がエーレンフェストに、正確にはローゼマインに敵愾心を持っている事、フェルネスティーネ姫がエーレンフェストについて、随分調べている事が分かった。
そして直後、騎獣に襲われたと勘違いした先生が失神した事で、講義は中断したのだった。
……フェルネスティーネ様とローゼマインは似ているのでは無いか?
言葉にすると、現実にローゼマインが何かやらかしそうで、思わず黙り混んだ。
いよいよシュタープの取得だ。私とローゼマインは並んで歩いている。
ローゼマインの足は遅い。人より小さな体に、虚弱体質。致し方無い。
意識して歩く速度を変えていると、ローゼマインが脇に寄った。後ろの人間を先に通そうとしている様だ。ならば私も、と同じ様に脇に寄る。
「ヴィルフリートは優しいのね。」
いつの間にかフェルネスティーネ姫がおられた。フェルネスティーネ姫がエーレンフェストについて調べているらしい事は一応、叔父上に知らせている。だが調べているのはエーレンフェストだけとは限らぬ為、迂闊に近付かぬ様、特にローゼマインが勝手をせぬよう、見張れとも言われていた。
…しかし可笑しいのはローゼマインだけでなく、フェルネスティーネ姫もだと思う。そうでなければ、異性を背負え等、提案する訳が無い。
…しかも、話を訊けば理屈は通っている。この感じ、叔父上に似ている様な…。そうか、叔父上とローゼマインは似ているのか、はっ! 寒気が…。
「気遣いを破廉恥と思うなら、それはそう思う人間が破廉恥なのよ。」
誤魔化す様に渋れば、フェルネスティーネ姫がそう仰られた。ああ、やはり叔父上にそっくりだ。何だろう、髪色も瞳の色も同じだからだろうか、顔付きまで似ている気がしてきた…。
「ローゼマイン、私の背中に乗れ。」
私は結局、フェルネスティーネ姫に従った。
3人(?)で歩いて暫く。私は自分の神の意志を見付けたが、ローゼマインはまだだと言う。薄々解っていたが、ローゼマインの魔力は量も属性数も私を上回っている様だ。…果たして差は埋まるのだろうか。
開けた場所に着いた。
「綺麗…。」
「奥はこうなっているのか。」
思わず口に吐いてでる。ローゼマインの神の意志が見付かったと言うので、背中から下ろしてやると、私は元来た道へ戻るつもりだった。しかし…。
「神に祈りを!! 神に感謝を!!!!」
祝福が溢れ、空間一杯に広がる。…思いっきり巻き込まれた。
「兄様、私…、」
「ああ言う感じだ。……え。」
ローゼマインと顔を合わせ、話していると、突如として、視界に神の意思が現れた。
私の魔力量が大幅に増えていると、気付いたのはその日の事で、全属性になっている事には数日経って気付いた。
尤も領地内はそれ処ではなかったのだが…。
作品名:逆行物語 第三部~ヴィルフリート~ 作家名:rakq72747