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逆行物語 第五部~フェルディナンド~

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ドレッファングーアの箚さくれた糸紡ぎ(1)



 エーレンフェストに連れられ、セラフィーナと言う女性が私の母親になった。
 没落した下級貴族の娘、セラフィーナはその魔力量を認められ、アウブの後見の元、貴族院を卒業した女性だった。ヴェローニカにも気に入られ、星を結んだが、夫となった者が高みに昇ってしまい、以来、独り身であった。
 本来はヴェローニカが私の母親になる筈だったが、それを断られた為、セラフィーナに頼んだ様だ。しかしセラフィーナはヴェローニカの怒りを買う事、外聞を気にして、洗礼式の準備はするが、母親としては参加しないと言い放った。
 そしてセラフィーナとヴェローニカが選んだ側仕えや教育係に私は嫌がらせを受けてきた。
 そんな私の味方は異母兄となるジルヴェスターだけだった。と言っても、私が城に来た時点でジルヴェスターは貴族院だ。ジルヴェスターが私に構う時は嫌がらせも成りを潜ませていたが、その影が見えなくなる時期にはまた嫌がらせは復活した。少量で命に別状は無かったとは言えど、毒入りの食事を齎されたのは、その頃からだったか。
 毎日で無かったが故に、隙を見せられない毎日。ヴェローニカの嫌らしい笑みがこぶりついた。
 ジルヴェスターからフロレンツィア様と星を結ぶ協力を、と頼み込まれ、僅かばかり心が寒くなった。この兄の関心を一身にひいている、と思い込んでいた事に気付かされ、己を嘲笑った。
 ヴェローニカは口ではアーレンスバッハから花嫁を、と望んでいたが、実際にこんな中領地に望んでやって来る者は酔狂だと言う事もあり、直接的な邪魔はしなかった。その為、領内を纏めるのは難しくなかった。
 私が貴族院に向かう直前、セラフィーナは高みに昇った。私の母親となった為、父上の愛妾となったが、本人は望んでいなかった。
 果たして私は何の為にエーレンフェストに来たのか。ドレッファングーアは何を考えていたのか。答えは出ない。
 入学初年、私は最優秀を取った。ジルヴェスターも父上も喜び、私を誉めた。…父上は私をエーレンフェストの誇りだと言って下さった。その言葉は私の胸に暖かく響いた。
 その後、ジルヴェスターが卒業し、父上はその祝いにと髪留めを贈られていた。翌年にはジルヴェスターとフロレンツィア様が星を結び(式の最中、何故か無言のヴェローニカに睨むのではなく、見詰め続けられた)、私はまた最優秀を取った。
 その頃からだった。ヒルシュール先生への嫌がらせが始まり、あっという間に酷くなったのは。そしてそんな状況にも関わらず、ヒルシュール先生に守って貰ったのは。ヒルシュール先生の助けがなければ、私は貴族院でも気を抜く事は出来なかっただろう。

 …ジルヴェスターの子が生まれた。ヴィルフリートと名付けられた男児はヴェローニカが育てるらしい。フロレンツィア様が納得されたとは思えず、ユストクスに聞けば、どうやら無理矢理だったらしいと分かった。ジルヴェスターが許したと言う事が信じ難かったが、どうもフロレンツィア様とヴェローニカの仲は最悪らしく、ヴェローニカの派閥から除けられているらしい。
 フロレンツィア様が力を付けぬ限り、蔑ろにされ続けるだろう。フロレンツィア様を守るには、ヴィルフリートを人質にするしか無かったと言う訳か。
 まあジルヴェスターにソックリらしいヴィルフリートを、そう悪くは扱うまい。現状では最善とまで行かずとも、次善な方策であろう。

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