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逆行物語 裏四部~ヴェローニカ~

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カーオサイファの老衰



 「フロレンツィア、私は貴方に以前より、フェルディナンドについてこう話しました。
 ‘フェルディナンドはアウブを狙っている’と。
 しかし‘フェルディナンドはアウブの座を狙っている’とは言ってません。
 明言しませんでしたが、ジルヴェスターの妻として気付いて欲しかった。」
 フロレンツィアは見る見る内に、目を見開いていきます。
「カルステッドもリヒャルダも。ジルヴェスターの過去を知る者として、フェルディナンドをもっと警戒して欲しかった。」
 2人共、顔色が変わって行きます。
「私はフェルディナンドに対しての憎しみはもうありませんでした。しかしフェルディナンドの気持ちに気付いた故に、警戒をしていたのです。
 …あの子がエーレンフェストを出て行くと解った時、どれだけホッとしたか…。それが叶わぬ事になり、どれだけ絶望したか。
 神殿と城と…、距離が開く事で、それならば、とも思いました。
 私は…、アウブ第一夫人としては失格だと言われます。悋気が強過ぎる、と。確かに事情を知らなければ、表向きはそう見えるでしょう。
 ですが…、ライゼガング派には言われる筋はございません。逆を言えば、それ以外の者達ならば、私に対する評価も受け入れましょう。
 フロレンツィア、私は、貴方が二重の意味で許せなかった。貴方はジルヴェスターの妻でありながら、フェルディナンドの異常さに気付かず、擁護した。私と並ぶ為にライゼガングの血筋の味方を頼った。…そんな事せずとも、貴方がフェルディナンドを切り捨てろと、ジルヴェスターに進言していたなら、私の派閥を引き継がせました。ヴィルフリートの養育も任せました。
 …私は貴方の姑ですから、息子がある意味で元凶だと解っていても、息子を庇い、貴方を責めます。
 同じ様に…、カルステッド、リヒャルダ。貴方達2人の暢気さに呆れています。
 ジルヴェスターは行方が解りません。状況から見れば、フェルディナンドが誘拐したとしか思えません。動機は今言った通りです。
 ですが、具体的に罰則は与えません。それどころではありませんから。エーレンフェストの為、ジルヴェスターの件をどうするべきなのか、考えなければならないでしょう。」
 私は自分を押さえました。ジルヴェスターをフェルディナンドから取り戻せるかどうか、ここは領地で団結しなくてなりません。