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逆行物語 裏三部~フェルディナンド~

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慟哭



 考えてみれば、今までその調整をしてきたのは、私を含め、ローゼマイン以外の人間だ。それもローゼマインの特異性を有能と思う人間ばかりで、足踏みはしても、結局、言うがままに進んでしまっている。結局、彼女の遣りたい事は間違っていない、と言う大前提で動いているからだ。
「そもそも何かが動けば、何らかの揺れ戻し、情勢不安が起こるわ。
 人の手で歴史を残さないユルゲンシュミットでは解りにくいだろうけど、人がシュミルを飼う様に、神に飼われて、神の視点でしか歴史を残さないユルゲンシュミットでは検証も出来ないけど、私はどの世界でも共通すると思う。
 日本基準では只の変人、大人になれない子供の言う事を優れた意見として取り扱うなら、エーレンフェストで起こる揺れ戻しは、手が付けられないわよ。ユルゲンシュミット全体を巻き込む可能性も多いにある。
 私はローゼマインと違って、この世界に受け入れ易いモノだけを、穏便に受け入れて貰える様考えているし、交渉の余地の無い神が言い出さなければ、自分の権力や特別性を連発したりはしないわ。
 意味が分かるわよね、フェルディナンド。」
 分かっている。エーレンフェストはローゼマインをアウブにしなければならない。彼女の異端を飼い慣らし、ヴィルフリートをエーレンフェスト発展魔術具の主として、教育せねばならぬのだ。出来なければ、エーレンフェストは滅びる。ツェントは私に、そう言いたいのだ。
 本当に如何なる手段か、いや、神が関係しているのだろう、エーレンフェストやローゼマインに関する情報だけでなく、ニホンとモトスウラノに付いての情報も集まっている。
 隷属しながらも、対抗出来る領地と人材を育てなければ……。

 ローゼマインを騙して、押さえ付けてでも。

 「…畏まりました。」
 返事をした瞬間、ローゼマインの姿が浮かんでは消える。…顔が見れない。

 視界から、色が、消えた。

 盗聴防止を片付けた後、公になるエーレンフェストと中央の決め事について、話し合った。

 …ジルヴェスター、私は何の為に、アウブになっているのだ…?

 記憶の中の、父上の声が思い出せない。