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逆行物語 裏二部~ジルヴェスター~

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ヴィルフリートとローゼマイン



 私の後ろ楯は母上で、その派閥を味方としたいなら、フェルディナンドを切り捨てるべきなのは解っていた。
 母上と父上の確執は知っているし、母上の気持ちも解る。フェルディナンドに何の罪があると責める事さえ出来ぬくらいには。
 それでも私はフェルディナンドを見捨てる事が出来ない。故にフロレンツィアはフェルディナンドを擁護する方向へ動き、母上と敵対させてしまった。ヴィルフリートを人質にさせてしまった。
 カルステッドやエルヴィーラの力を借りて、何とか対抗派閥を育てているが、まだまだ執政には母上の力が必要である以上、傀儡から抜け出せず、フェルディナンドを守り切れず、神殿に追いやってしまった。

 そして事態は大きく動いた。

 選択しなければならない時が来た。母上か、弟か。悩んだ。
 母上を護れば、マインとフェルディナンドに処刑を課さねばならなくなるだろう。
 だが、フェルディナンドを護ればマインを助けられ、母上も罰するが、処刑には出来ぬ。
 その事実が、最終的な判断材料だった。
 マインをローゼマインにし、フェルディナンドからの助言や忠言を元に、その具体的な配置を決めて行った。

 ヴィルフリートがローゼマインに影響を受け、神殿に行き来する様になってから、神に祈りを捧げたり、本を読んだりする様になった。
 2人の仲は好くなって行き、婚約の文字が浮かぶ様になっていた。
 私は自分の派閥を削っているから、足元を安定させる為にも良い手だった。だがまだ早いか…。
 
 ヴィルフリートよ…、いつの間にフェルディナンドそっくりな中身になったのだ? 
 まずはローゼマインの優秀さを領地の利益とする事が先だと考えていたら、切った派閥の者達が暗躍を始めた。更に姉上の動きも怪しく、エーレンフェストは掻き回された。
 ローゼマインやヴィルフリートに対する動きは封じられたが、まさか真なる礎が神殿にあるとは…。
 その昔は領主になる者が神殿長を務める慣習だった訳はこれか…。それこそ昔は神殿こそが執政の場だったのやも知れぬな…。
 それが何時からか変わり始め、執政する城が作られ、神殿が蔑まれ……。私は溜め息を付いた。ヴィルフリートの子には神殿長を務めさせるべきやも知れぬな。まだまだ先の話だが。