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逆行物語 真四部~下手の考え休むに似たり~

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ヴィルフリート~人柱な父親



 見極めが難しいのだが、前者で逆らうは尊い事ではなく、バカである。更に大抵は逆らうべきではない流れが殆どだ。
 今まで父上は自分が乗る舟のオールを叔父上に任せていたから、流されているのか、逆らっているのかも解らなかったのだから、進歩と言える筈だ。
 それなのに…、結局、父上は叔父上を拾ってしまった。そして守りたいが為に子供に逆戻り。助けても良い言い訳を見付けられる様に視野を狭くし、妻子をまた、視界から消した。

 賭けるのは自分の命だけと、思い込める様に。

 本当に父上は……。私は溜め息を深く吐いた。

 何時か、何らかの形で叔父上と話してみたいと思っていた。
 父上に大人になって欲しいとは今更思わぬ。父上は子供でいたいのであろうし、母上の父上操作レベルは高くないのだから、子供の方が良い。
 故にこそ、叔父上には自覚を持って操作して貰いたい。だから麗乃の許可が欲しかったのだが(神々の手前、麗乃にしろ、“マイン”にしろ、敵に回したくない)、あれはダメだ。全く以て気付こうともしない。解り易い現象があるのに。

 「其方は叔父上と共に幸せに生きる事が本当に出来ると思っているか、だ。其方が叔父上より長生きするか、或いは名捧げをし合って、共に逝くかすれば、全て解決だと思っているのなら、私は違うと思うのだ。」

 私は叔父上の人生に責任を持って欲しい訳ではない。もっと単純に――、叔父上に一緒になっても、其方が幸せになれるか解らない、と言いたかったのだ。
 だが麗乃は叔父上が自分を幸せにしてくれる事に疑いは無く、執政における自分の理解の無さや産業発展における甘い考えが、それに影を指す問題だけを気にしている。

 ある意味、お花畑だ。

 何故、気付かぬ。神話のエーヴィリーベはゲドゥルリーヒを幸せにしたのか。
 望んで父上をエーレンフェストや家族から引き離して監禁した叔父上が、其方に同じ事をせぬ保証が何処にある? 
 下町のゲドゥルリーヒからも、信を置く側近からも引き離され、監禁されて、それでも其方は幸せか? 
 2度目の時間軸で叔父上は父上を不幸にした。1度目の時間軸で叔父上は其方を幸せにしたのに。
 何が違って、この差が生まれたか。何が原因でこうなったか。何故、叔父上は父上の幸せを考えてくれなかった? 何故、叔父上は其方の幸せを考えた?
 …どの事柄が原因か、或いは全ての連なりが原因なのか。ハッキリ言える事は唯1つ。
 相手に自分の欲を100%ぶつけても構わないと思えるのは、

 その相手をバカにしているからだ。

 父上は叔父上にとって、下位な存在だった。
 麗乃は、マインは、ローゼマインは、叔父上にとって、対等以上な存在だった。

 ただ、それだけだ。

 その叔父上を肯定している麗乃も、結局はそう言う事なのだ。まあ良い。それならそれで、また付き合い方を考えれば良いだけだ。
 ゲオルギーネ叔母上の憎悪の無い歪んだ好意を嫌悪と解釈する麗乃が考えもしないのと同様に、自分や叔父上が父上をバカにしている感情がある等、理解出来ぬだろう。
 ならば敢えて無理に解らせようとしなくても良い。父上にはバカにされたままでいて貰った方が平和だ。
 今回は夢を伝っての会話で、色々とバグった2人を見て、どうしようもないと匙を投げたから父上を差し出した訳だが、バグらなくても基本姿勢はこれで良いだろう。

 エーレンフェストの為、叔父上と麗乃と上手くやっていく為、父上には人柱になって頂こう。

続く