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逆行物語 真四部~下手の考え休むに似たり~

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麗乃=マイン~休暇前に~



 「まず“知識”と“マイン”について。これはどちらもカーオサイファ様の御力で作られている。
 “知識”は作られた当時の其方の知識を、“マイン”は其方の魔力と性格と記憶と知識の一部と、肉体と本来の成長過程をカーオサイファ様の御力でコピーしたモノ。つまりカーオサイファ様がお造りになった魔術具、人間から言えば真の“神具”なのだ。
 “マイン”が意思はあるが、自覚が無い“神具”で、“知識”が意思の無い“神具”だ。
 “マイン”は自ら行動するが、“知識”はそうではなく、知らず拾った者を強制的に持ち主する事と、持ち主が害され、身を守れなかった場合に逃げ出す事しか出来ぬ。
 前回、フェルネスティーネ様が持ち主となり、其方が巻き戻しを利用して、殺意を持って害した際、抵抗の意思さえ持てぬフェルネスティーネ様から逃げ出した。其方の目眩まし様に、分身を2つ作ってな。」
 私はフェルネスティーネ様から出て、私をすり抜けていった3つの光を思い出した。
「“知識”にしろ、“マイン”にしろ、元を正せば神力、つまりは魔力。神具は常に魔力が供給される仕組みになっているが、分身まではそうではなく、見た目を真似た適当なモノで、何れは消える。
 だが今回、消える前に2つ共拾われてしまった。そして図らずとも、魔力を供給される事になり、未だ消えず存在している。
 …“知識”の持ち主が私で、分身の持ち主が“マイン”と叔父上だ。結果――、私は1度目、2度目、3度目の“ヴィルフリート”を混ぜた私になり、“マイン”と叔父上がバグったのだ。」
【のおおおおん……。】
 まさか怒りに任せた行動が、そんな事に結び付くとは……。
「麗乃、大丈夫か?」
 ショック受けてるよ、解るよね。兄様の溜め息が聞こえた。
「…神々の干渉がどうなるか、全く以て解らぬが…、今の私にはエーレンフェストにとっての最善を尽くす以外の選択は無い。
 そして今回、その結果は、其方に何の影響も与えぬ。だから、心を休め、自らと向き合う時間がある筈だ。
 この先を何も見ず、何も聞かず、エーレンフェストと関連を持たぬ何処かの領地で、静かに過ごす事が必要だと思う。
 
 ――その為に、今、私と話をして欲しい。」

 真剣な声で言われ、私は抱えていた頭をそのままに、目だけ兄様に向ける。兄様は私が話を聞く気になったと見なしてくれたらしい。
「麗乃、其方は疲れている。自らの死の後の悲劇を見、自らのいない世界を知り…、それは其方に苦痛しか与えなかった。
 其方は疲れ果て、まともに考える事が出来ぬ状態で、カーオサイファ様の提案に何の覚悟もなく、頷いてしまった。
 そこにフェルネスティーネ様が現れたのだ。其方を嫌いまくっている彼女は、更なる生き地獄を其方に与えた。
 怒りに任せたとは言え、殺意に身を任せる事になったのは、その為だろう。今は休むべきだ。」
 …ストン、と落ちた。疲れていると言う言葉に。
【私、嫌われていたんだ…。】
「フェルネスティーネ様の嫌悪に気付かないくらい、其方はまともな思考能力や判断を失っていたのだ。」 
 言われてみれば、その通りだ。
「其方は今回、何も見ず、何も聞かず、休むべきだ。」
 再度言われ、私はコクンと頷いた。