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逆行物語 第六部~エーレンフェストの女達~

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ヴェローニカ視点~フェルディナンドの婚約者~



 そのオルドナンツは突然、やって来ました。側近の間を潜り抜け、伝言を発します。

 「ヴェローニカ様、フェルディナンドです。婚姻したい女性がいるので、相談に載って頂きたいのですが。」

 …………………はっ!

 何だか意識が高みより高く昇っていた気がします。私だけでなく、側近達も動きが停止しています。無理はないでしょう。
「何故私に……。」
 声を出し、意識に槍(渇)を入れようとしましたが、動揺が溢れ出す方が早く、声が震えておりました。
 私はみっともないとは思いましたが、息を吸い、吐いて、気を落ち付ける様に努力しました。
 …もし真実であれば、これ程喜ばしい事はありません。私のアウブを狙っていると言う言葉が、エーレンフェスト領内を騒がせてしまった事もありますが、フェルディナンドがそつなく対応しておりましたので(結果が神殿入りですが)、そう心配する事も無いでしょうから、好意がジルヴェスターから移るならば、目出度い事と言えるでしょう。
 しかし神殿入りしたフェルディナンドに一体どんなお相手が? 青色巫女もおりませんのに。
 灰色巫女とは考えられません。女性嫌いなフェルディナンドが花捧げする相手に、と言うのも考え難いですし、そもそも婚姻出来る相手ではありません。
 疑問に感じながら、私は返事をオルドナンツに伝えました。

 3日後。城の一室で、私はフェルディナンドを迎えました。当然、ジルヴェスターも呼んでいます。ジルヴェスターは何も知らされておらず、非常に驚いていました。
 どんな話が飛び出して来るのか、予想が付かない為、盗聴防止の結界を作動しました。流石に全員分の魔術具を用意するのはあり得ません。只、話を聞いておくだけの存在が何人もいるのですから。
 …最初のオルドナンツの発言を聞いているので、遠ざける事も難しいのです。もし聞かれて不味いなら最初に言って来るでしょう。

 フェルディナンドは何か、いえ、誰かを抱えていました。後ろにはユストクス、エックハルト、ハイデマリーが控えています。
 3人共、顔には出しておりませんが、心中は想像出来ます。何故、私に相談するのか、と言った不審があるに違いありません。更に言えば、フェルディナンドが選んだ相手にも思う処があるでしょう。
「御時間頂き、ありがとう存じます、ヴェローニカ様。此方が私の全ての女神です。」
 盛大なノロケも驚愕ですが、その紹介された、フェルディナンドの腕から下ろされた相手に、糸車が壊れます(時が停止します)。
 初対面の挨拶は領主候補生にも劣りませんが、そんな事はどうでも良いとさえ感じてしまいます。マインと言う名前から平民である事が伺えましたが、それもどうでも良いです。

 「洗礼前の子供では無いかっ!!!! 其方は幼女趣味だったのかっ!!!??」
 
 目眩がした私に代わる様に、ジルヴェスターが叫びます。
「洗礼式なら先日迎えましたよ。」
「嘘つけっ!! 小さ過ぎるっ!!」
 …そう言う問題ではありませんっ!!! 何やらずれた回答をし合う2人に、とにかく場を仕切り直す事にしました。
「…2人共、取り敢えず落ち着いて下さい。」
 口を閉じなさいと伝えると、それに従う2人。ちらりとフェルディナンドの側近達にも目をやりますが、一切の感情を外に出しておりません。しかし、何処か遠い目をしている様に感じます。いえ、これは私の心がそう感じさせるのでしょう。
「フェルディナンド、まず確認しますが、本気なのですか?」
「ええ、本気です。」
 フェルディナンドは屈み、マインと名乗った少女に視線を合わせながら、微笑みました。…はっきりと熱が篭っているのが分かります。ジルヴェスターを見る目と同じ、いえ、幸せそうな色が見受けられる為にそれ以上に欲を感じます。
「そ、そんな…、フェルディナンドが、幼女、趣味…、」
「黙りなさい、ジルヴェスター。」
 側近達に動揺が走ります。確かに私がジルヴェスターにこの様な言い方をするのは初めてかも知れません。増してはフェルディナンドを庇う様にも見受けられもする言い方で。
 フェルディナンドがジルヴェスターに視線を向け、口の端を上げて笑います。そこには嘗て私が警戒した色はありません。
 マインはニコニコと微笑み、フェルディナンドを見詰めています。女の直感ですが、マインは意味を分かっていない訳では無い様です。