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げつ@ついったー
げつ@ついったー
novelistID. 2846
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翻弄

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おかしい。俺は女の子が好きなはずなんだよ。大きい目とかすべすべのほっぺたとか柔らかい胸とかお尻とか、いい匂いする身体とか、 さらさらした髪とか、そういうのがさぁ。おっかしいなあ。
「なんで門田なんだろね?」
「俺に聞くな」
俺が女だったらお前はビンタ付でフラれてるぞ。門田は不機嫌そうに呟いたが、元よりハニー相手ならこんな不躾なことは云わない。 門田が相手だから云ったんだ。
「きょーへー、寒い〜。ろっちーのことあっためて〜」
「……頭の悪いお誘いだな。そんなんでナンパできんのかお前」
「生憎顔のつくりがいいからさ」
あ、また呆れられた。門田っていっつもそうだよね、絶対俺のこと舐めてんだよね。いつだってそうなんだ。
黙って横に腰を下ろした門田は俺の顔なんかろくすっぽ見ずにキスをする。目の上にひとつ、鼻にひとつ、口の端っこのとこにひとつ、そして唇、舌。 ちゅ、ちゅ、と軽い音を立てて、俺の髪を梳きながら、器用に。……このこなれた感じがむかつく。 硬派っぽい振りして、ちゃんとやらしいことの楽しさを知ってるエスコートをする。経験だけは多い俺だけど、 基本的に女の子相手に受け身だなんて男が廃るからこうやって甘やかされることには慣れてない。しかも相手、男とか正直はじめてだ。 たぶん門田にはバレてるんだろうけど。
「・・・なに?」
「え、」
「なんか、考えてるだろう」
「…べっつにぃ」
おかしい。何でお前なんだろうね?他に俺が理想だって思う子はいっぱいいるのに、なんでよりにもよってお前なんだろうね? 俺は不思議でしょうがないよ。
「千景、こっちみろ」
「…きょーへいがこっち見たら見る」
「もう見てるんだが」
熱っぽい視線とかち合う。「よくできました」ランドセルのガキに云うみたいな口調で門田は囁いた。 口調はそんななのに声とか息とか行いとかがエロいのがずるい。知ってる、知ってるさ、門田が俺のこと見てないわけじゃなくて、 俺のほうが門田の顔をまともに見れてないことぐらい。門田はいっつもそんな俺を見ながら、喉の奥で笑いを噛み殺したような声で俺とセックスをする。 「千景」だなんて、格好つけてさ。そうやって俺をどんどん惚れさせて、お前一体俺をどうする気なの?なんて、そんなあほらしいことは聞けないけど。 俺は男だからあんたの嫁にはなれないし、勿論、あんたの旦那になることもできない。あんたのために女になるなんてのも御免だ。 俺は男だし、そんな俺でいたい。あんただってそれを望んでるだろう。俺たちは実りのある関係になんてとてもなれないし、周りから認められる関係でもない。 時代が時代で場所が場所なら二人揃って首が飛ぶ(比喩ではなく、リアルに)、そんな関係性だ、俺たちふたりは。何やってんだろうね、ほんと。
「ガキ扱い、すんな」
「ガキだよお前は」
「……このオッサン」
「四年したらオッサン同士だ」
…四年したら、って、あんた四年も俺と一緒にいるつもりなの?四年ってうんと長いよ。あんたが思っているよりずっと重い時間だよ。 四年あったら中学生も高校生になるし、その間に童貞人口は半分ぐらいになっちゃうし、 四年付き合えば世間のカップル「そろそろ結婚?」ってにやにやしながら訊かれたりするよ。 そんな長い四年を実りなく窮屈で面倒くさいこの関係に費やしてくれるの?
「……何だ、今日やけに呆けてんな。俺なんか変なこと云ったか?」
「云った」
「なに、」
「教えない」
でも俺がずっとこうやって悶々と考えてても、絶対門田は無意識なんだ。 思えばこいつは俺なんかよりずっと上手の無意識タラシなんだよ、初めて会ったときからずっとさぁ!
「……このタラシ野郎」
「そりゃどーも」
我慢できずに吹き出した門田を睨む。宥めるようにキスをされて、そんなんで誤魔化されるほどちょろくないぜ、って思ってるのに、どうしようもない。 格好いいんだ、門田は。くそう、ずるい。理想の女の子なんかよりずっとこっちのほうが好きだとか思っちゃうじゃないか。 四年経ってオッサンになっても相変わらず俺はこんななんだろう、とか、しょっぱい絵面が想像できちゃうがないか。 何でお前なんだろう、とか考える暇もなく引きずり込まれた、あの出会いのときみたいに。ずるいずるい。

(責任取れ、この天然タラシ!かっこいいんだよばか!!)
作品名:翻弄 作家名:げつ@ついったー