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逆行物語 第六部~貴族院のお茶会~

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エグランティーヌ~ヴィルフリート様の無礼~



 今度はローゼマイン様に曲を作れと仰るのです。しかしローゼマイン様はその様な無理難題にその場で御応えになりました。
 即興で作られた曲は、透き通る様な美しさで、神々の存在を感じる様でございます。更にローゼマイン様はこの曲は私を思い浮かべて作った、私がローゼマイン様にとっての光の女神だと申され、私はローゼマイン様が殿方であれば、ラッフェルの虜になったと思いました。

 …それがアナスタージウス王子の不興になったのです。

 興醒めだと立ち上がり、その場を去っていきます。私が取り成そうとした時です。
「アナスタージウス王子!! 好きなら好きとエグランティーヌ様本人に向かってはっきり仰られてはどうですか!!? 失礼承知で申しますが、全くの対象外な現実にまで嫉妬するのは見苦しいし鬱陶しいですよっ!!!!」
 叫ぶ様な言葉に一同がぎょっとして、ヴィルフリート様を見つめます。
「何だとっ!?」
 アナスタージウス王子が振り返り、叫んだ瞬間です。
「私の父は二歳上かつ、順位も違う上位領地の母に、体当たりな告白で押して押して押しまくって、身の程知らずと評され、嘲笑いを受けながらも全くめげず、遂には努力の人と言われ、ラッフェルを実らせました!!」
 一同、唖然です。アナスタージウス王子も目を丸くしております。
「アナスタージウス王子、父上は母上を得たいから、相応しくある為、立派なアウブを目指すと言い、その為にエーレンフェストの順位を上げる努力をしたそうです。
 逆に母上を得られないなら、アウブの地位に価値がないとまで言ったそうです。ギーベにでもなった母上に婿入りしてでも一緒になりたいと。」
 …思わず聞き入ってしまいました…。
「アナスタージウス王子、私の父上程バカになれとは言っているのではありません。」
「父親にバカとは、」
「我々の様な元・下位の中領地の新入生が無礼を働いた、それだけで結構です。ローゼマイン、帰るぞ。失礼致します、先生方。」
 ヴィルフリート様の言葉に、エーレンフェスト勢が従います。
 …確かに無礼です。何らかの罰則があっても可笑しくありません。しかし、私はもし、アナスタージウス王子がそう言い出したら、全力でエーレンフェストを守るでしょう。それだけ、ヴィルフリート様は私の心を打ったのでございます。