チョコレイト
「なんだ、知っていたのか」
「えぇ、しょくらとを、とも昔は言いましたか。最も今も日常的に食べたりはしませんが」
「なんだ、そうか……」
イギリスが急に元気がなくなったような気がして、日本は目を瞬いた。なにか、まずいことでも言ってしまったのだろうか。
「あの、英吉利さん?」
「……あ、悪い。なんだ」
「それ、頂いても?」
イギリスの手の中にある紙袋を指差して、日本は思わず首を傾げてしまった。イギリスは暫く視線を泳がしていたが、小さな声で返してきた。「お前がどうしてもって言うなら、やるよ」
「はい、是非」
静かに微笑んで頷くと、紙袋を押し付けられるように渡された。
甘い香りに、思わず日本の頬は緩む。
イギリスが持ってくるお菓子はいつもとても甘い香りがする。日本が今まで知らなかったような香りだ。
その甘い香りが、イギリスには似合っている、と思えてしまうのは何故だろう。
(はちみつ、さとう……)
思わずイギリスの容姿から、そんな連想をする。
はちみつとさとうなら、このチヨコレイトより甘いかもしれない、と。思わず金色の髪に伸ばしかけた手を、日本はなんとか止めた。