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序章・竜の記憶、少女との出会い

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東方星写怪異録(とうほうほしうつしかいいろく)


とある村に、こんな伝承がある……
『神が創りたもうた破壊と創造の竜の化身あり』
『竜はその力で世界を狂わせたという』
『神は人に竜を封じる術を教え、竜を封じさせた』
『竜は封じられておらず、人を唆し何度も甦った』
『人は考え、竜を人の中に封じた』
『竜は怒り、人の意識を奪い世界を破壊し続けた』
『神は竜を魂・力・躯の3つに分け、それぞれを異なる場所に封じた』
『魂は神に選ばれた巫女の中に』
『力は神の元へ』
『躯はもう1つの星へ封じられた』
『竜はそれ以降、甦ることは無かったという』


辺り一帯に立ち込める何かが焼けたような臭い、地面は焦土と化し空は暗雲が支配していた。
人々は絶望するしか無かった。
『それ』は古に語られ、そして忘れ去られた存在だった。
『それ』は既存の兵器では傷すら1つ付ける事が叶わなかった。
『それ』はありとあらゆる物と者を破壊し尽くした。
そして、『それ』は空を裂きかねない程の咆哮を挙げ……


────竜は世界を壊す────
────竜は……傍らに亡き少女の躯を抱え────
────竜は…………泣き叫ぶかの様に、世界を壊す────



……時は巻き戻る……

見渡す限り一面の暗闇、何も無い空間だった。
そこには何者も存在せず、何者もここへ来ることは出来ない……そのはずだった。
いつかはもう覚えていない、だが出会った時は覚えている。
いつの間にか人の子が居た、それも少女だった。
何も無いこの空間を見渡すその表情は好奇心に満ち溢れている様だ。
何もせず、そのままやり過ごせば良かったが……
〖……オイ、キサマ〗
この場に似つかわしく無い少女へ我は……思わず声を掛けずにはいられなかった。
???「あら、邪魔しちゃったかな?」
振り返る少女の瞳に我の姿が映る、その姿の意味を理解できない者は居ない……だが、それでも少女は動じず声に応えてきた。
〖キサマ……我ヲ知ラヌノカ〗
我ながら馬鹿な事を聞いたと思った、だが人の子達にとって我の存在は恐怖や畏怖されるものだ……だからこそ目の前の少女が敵意の無い返事をしてきた事に戸惑った。
???「神が創りし滅びと創造の竜、神に背き世界を壊し、神と人の手によって封じられし竜、なんだよね?……知ってるよ」
他の人の子から伝え聴いたのだろうが我の事を話す少女の顔は寂しさを隠し切れていない表情だった。
〖我ヲ見テ恐怖モシナカッタキサマガ……何故寂シソウナ顔ヲスル〗
???「何でだろうね?でも私が貴方だったら……寂しかったからって思う」
竜は何故神に背いていたのか、神や人達によって封じられた時も、何を思い考えたかはもう分からない。
竜は今まで会うことのなかった感情や表情を見せるその少女に興味が湧いていた、だからこそ竜は聞いた。
〖キサマ……名ヲ教エロ〗
少女はほんの少し目を伏せ……
???「名前は、無いよ……私には無い、ごめんね」
〖……ソウカ、ナラバ名ヲ付ケテヤル〗
???「……え?」
意外な提案をしてきた竜を前に目を丸くする少女、竜はその顔を見ながら更に少女へ言葉を続ける。
〖我ガキサマニ名ヲ与エル、ソノ代ワリキサマハ我ニ名ヲ与エヨ〗
竜にも名と呼べるものは無かった、だから互いに名を与え合う事にした、少女にも考えが伝わったようで。
???「分かった、名前を付けてあげる」
と、少女は笑った。

しばらく竜と少女はお互いに思いつく限り名前の候補を出し合っていたが、しっくり来るものが無く次第に思案する時間が長くなっていた。
???「名前、思い付かなくなって来たね」
思案していたであろう少女が不意に呟いた、どれ程の時間が経ったとかは分からないが呼び名に納得出来ないのだから仕方なかった。
〖呼ビ名程度ニココマデトハ、ナ〗
少女の呟きに返したつもりでは無かったが、自然に返事をしていた。
???「………塵、ちり…じん…………ジン!」
〖ジン……?〗
???「塵みたいなの纏ってるし、見た目からだから簡単だけど……ダメだったかな」
少女は少し不安そうに聞いてきたが、今までで提案された名前の中で1番しっくりしていた。
〖イヤ、ソノ名デ構ワナイ〗
???「じゃあ、貴方の名前はジンで決まりだね」
竜は目の前の喜ぶ少女を見ながら、遠い昔同じ様に笑いかけて来たある人の子の名を……
〖……シトネ〗
???「…しとね?」
首を傾げる少女に、竜はとっさに呟いた言葉を取り繕っていた。
〖寝ル事ト死ハ同義デハ無イ、ガ我ニハ……〗
???「しとね……うん、気に入った!」
竜の言葉を遮り、少女は名前を気に入り喜んでいた。
〖マア、ソレデ良イノナラ、我ハ構ワンガ〗
少し、拍子抜けしている竜をよそに少女は微笑みながら。
しとね「じゃあ、改めて……宜しくね、ジン」
〖アア、シトネ〗
名を付けあった竜と少女は少し恥しそうに、しかし誇らしく互いの名を呼びあった。

────序章・竜の記憶、少女との出会い────