第1章・3話『氷精妨害 壱』
―人里近く―
魔理沙「────結界に関しては今のとこは紫が食い止めてる訳なんだ、だから私達が異変解決しながら霊夢を探す必要がある」
しとね「その為にも……まずはこの霧と雨を止め無いと、ですね」
箒に乗った私達2人は人里近くの上空を飛び、道すがら魔理沙は簡単な説明をしてくれていた。
このままだと幻想郷が崩壊しかねないので、それを防ぐ為には博麗の巫女を探さないといけないが、異変も起きてるからそれを解決しながら探さないといけないという事。
魔理沙「そうだ、異変の発生源だこのまま飛んでりゃすぐ着くさ」
しとね「異変の解決は……弾幕勝負でしたよね?」
魔理沙「あぁ……弾幕ごっこな、しとねはこっちに来たばっかだ、最初の方は見ときゃ良い」
紫さんから弾幕ごっこの説明を聞いただけのしとねにはそもそもの話しだった。
紫さん曰く『魔理沙と異変解決で動いてたら、自然と覚えるわ……頑張って』らしい。
人里から少し離れた様で周りを見ていると、小さい池があり小さな人影が二つ見えた。
しとね「えと……魔理沙、池の方に人影が」
魔理沙「ん?……あぁ、ありゃチルノと大妖精、2人共妖精だ」
魔理沙さんの返答を聞き、『ほえー』と改めて池の方へ目を向けなおすと────歪な氷の塊がこちらへ飛んで来ていた。
魔理沙「クソッ、あの⑨!こっちは急いでるってのに」
魔理沙は氷を上手く避けながら、懐から八角形の何かを取り出し妖精の方へ向けながら────
魔理沙「マスター……スパークッ!」
そう魔理沙が叫んだ瞬間、手にあった八角形から虹色の光線が妖精目掛けて発射された。
しとね「う……わわっ」
唐突の光量に思わず目を閉じた私は、同時に来た発射の衝撃に対処出来ずバランスを崩し……浮遊感を感じた時には、箒から落ちていた。
私が落ちたのに気づいた魔理沙は手を伸ばす……がその手は届かず虚空を掴む。
しとねは重力に引かれながら、静かに目を閉じ
しとね「借りるよ……ジン」
その瞬間、落下していく感覚が浮遊感に変わるのを感じ……しとねは目を開けた。
魔理沙は呆然とするしか無かった、幾ら幻想郷とは言え……外から来た魔力も無かったはずの人が……空を浮遊し、更に龍を使役出来るほどの存在とはだれも知り得ないだろう。
龍は周囲を見渡し、しとねへと向き直り
ジン「急とは言えど我を表へ呼び出すとは、どれ程の用だ」
しとね「いや、確かに名前は呼んだけどそういう事じゃなくて……えと、ごめんね?」
ジン「……そうか、では戻る」
そう言う龍の身体が透けていき光の玉だけがその場に残り、それもしとねの中へ消えていった。
魔理沙「しとね、今のは────」
???「食らえっ!アイシクルフォール!!」
何だ、と魔理沙が問いかけようとした声は別の方からの声で遮られた。
妖精から放たれた無数の氷柱がしとねに向け飛んでくるが……その方向をしとねは睨みつつ手をかざし────
しとね「……マスタースパーク」
そう言ったしとねのかざした手から、魔理沙が先程放ったそれと全く同じ物が放たれ、無数の氷柱は跡形もなく消し飛ばされた。
魔理沙「……ま、まじか」
しとね「ふぅ……流石に使う程では無かったかもですね」
呆然とする魔理沙の方へ振り返り、しとねは軽く笑いながら。
しとね「紫さんから聞いたんですけど、私の能力『模倣』らしいんです」
魔理沙「じゃ……さっきのマスパは、能力で模倣して撃ったって事か?」
しとね「そういう事です、一応魔法も使えますし」
魔理沙は改めてしとねが何故紫の目に留まり、異変解決の為に幻想郷へ招かれたのかを思い知った。
霊夢とは根本から違えど異変を解決出来るだけの素質があるのだろう、何より来たばかりで伝え聞いた能力を使えているのだ、並大抵で出来る芸当では無い。
と考え込んでいた魔理沙だったが……
しとね「で、妖精さんは何の用でしょうか」
その言葉を聞き、魔理沙は物思いから引き戻され妖精へ目を向ける。
魔理沙「そうだった、チルノ!お前何の────」
つもりだ、と言おうとした魔理沙だったが……チルノの姿に思わず言葉が出なかった。
チルノ「見かけたから仕掛けた、それだけ」
そう素っ気なく答えるチルノは、魔理沙がよく見る幼い少女では無く明らかに女性と呼べる姿へと変わっていた。
魔理沙「チルノだよな?何だってんだその姿」
チルノ「さあ」
魔理沙「さあって、そういや大妖精は一緒じゃないのか?」
魔理沙の問いかけにチルノは静かに指を湖へ指した……
しとねと魔理沙は湖へ顔を向け────湖に仰向けで大妖精が浮かんでいた。
魔理沙「なっ……」
チルノ「邪魔だっただけよ」
魔理沙「チルノ、お前っ!」
魔理沙が振り返ろうとした瞬間────よりも速くチルノの弾幕が魔理沙達を吹き飛ばしていた。
しとね&魔理沙「うわっ」
吹き飛ばされ、何とか体制を立て直した2人は……チルノの周りに出来た莫大な量の氷柱が一斉にこちらへ向くのを見た。
魔理沙「これも、異変の一種なのかよ?」
しとね「ともかくこのままじゃ危ないです魔理沙、森の中へ!」
しとねが森の中へ逃げ、少し遅れて魔理沙も森へ逃げ込む。
チルノ「氷符『アイシクルマシンガン』」
チルノがそう言い放つと同時に氷柱が2人が逃げ込んだ森の周囲へ降り注いだ。
氷柱は枝を切り落とし、幹を吹き飛ばし、薙ぎ倒しながら地面を抉り取る。
一通り氷柱を落とし終わり、氷柱を再生成しながらチルノは目の前に出来た巨大なクレーターを静かに見下ろしていた。
────第1章・3話『氷精妨害 壱』────
作品名:第1章・3話『氷精妨害 壱』 作家名:U46 410n