第1章・4話『氷精妨害 弐』
―湖近く―
魔理沙「うっ……」
森に逃げ込んだのも束の間、チルノが放ったスペルの影響で気を失っていた魔理沙は体の痛みに目を覚ました。
周囲を見渡そうと思ったが、しとねが覆い被さっていて周りが見えなかった。
魔理沙「おい、しとね」
しとね「……」
まだ気を失っているのかしとねは魔理沙の呼び掛けに応えなかった。
少し気の毒だが魔理沙は痛む体を動かし、しとねを横へ無理矢理どかすがそれでもしとねはされるがままだった。
魔理沙「しとね、起きろって────」
しとねの方を向いた魔理沙だが……しとねの左肩に分厚い木片が刺さっていた。
魔理沙「なっ……」
魔理沙は何で先に森へ逃げたはずのしとねが覆い被さっていたか……その理由を知った、魔理沙が逃げ込んだすぐ後……チルノの攻撃で箒から投げ飛ばされた魔理沙をしとねは身を呈して庇っていたのだ。
魔理沙「(どうする、木片を抜くか?いや、血は止まってる……なら)すぐ戻る、待ってろよ……しとね」
魔理沙は近くに転がっていた箒を掴み、わざとチルノから見える様に空へ飛び出した。
チルノ「……そこ」
チルノが呟くと同時、魔理沙目掛け氷柱が真っ直ぐ飛んでくる。
魔理沙は氷柱を避けながらチルノから距離を取る様に飛び、チルノは魔理沙を追い掛ける。
―???―
しとね「あはは……無理し過ぎたかな?」
ジン「……はぁ」
ジンは目の前で仰向けに寝て苦笑いをしているしとねを見て、溜息をつくしかなかった。
しとね「でも、ここでのんびりしてるわけにも────」
ジン「我が出る、休んでおけ」
起き上がろうとしていたしとねはジンの発言に少し驚きながらも頷いていた。
ジン「それに、あの様な戦闘は我の方が向いている」
しとね「ジン」
ジン「何だ」
名前を呼ばれたジンがしとねの方へ向くと。
しとね「ありがとね」
出会ったあの頃と全く変わらないしとねの笑顔、ジンは少しだけ目を伏せ、『行ってくる』とだけ呟いた。
―湖から少し離れた場所―
チルノの弾幕から逃げていた魔理沙だったが、氷符「パーフェクトグレーシェリスト」による広範囲攻撃で追い込まれていた。
魔理沙「はは……くっそ寒みい、まさかあの⑨がここまで出来るなんてな」
チルノ「……呆気ない」
チルノは作り出した氷の刃を寒さで動きが鈍っている魔理沙へと投げ────
魔理沙「(防げれ……ねぇっ!)」
咄嗟に目を閉じた魔理沙に刃が刺────る感覚が伝わってこない、魔理沙は恐る恐る目を開け。
しとね(ジン)「無事……とは言えぬ状況だな、貴様も」
魔理沙「し、しとね?」
しとねが展開した魔法障壁によって刃は魔理沙に刺さる前に防がれていた。
チルノ「……ちっ」
舌打ちしたチルノがしとねを睨み付けると同時、背中の氷から木の根が這う様に広がっていく。
チルノ「凍える冷気の元、荒れる氷柱の吹雪よ……氷符「アルティメットブリザード」」
チルノが左手を挙げると同時、広がった氷から氷柱が2人へ目掛けて縦横無尽に飛んでくる。
氷柱は2人に一定距離近づくと、砕けるように炸裂し無数の破片となって2人を襲う。
しとね(ジン)「……ディスペル・スペル」
しとねが呟いた瞬間、襲い来る破片もその後ろにあった氷柱までもが一瞬にして消え去った。
魔理沙「い、一体何がどうなったんだ?」
しとね(ジン)「スペルの無効化、及び使用不可能の結界……さて、どうする氷の妖精よ」
チルノ「……」
しとねの説明に魔理沙は驚き、チルノは静かに睨み付ける。
────第1章・4話『氷精妨害 弐』────
作品名:第1章・4話『氷精妨害 弐』 作家名:U46 410n